【11月9日 AFP】あるタカ科の鳥を観察したところ、羽の配色がメスに似たオスが繁殖競争の中で他のオスよりもメスに近づきやすいという利点を得ているという研究結果が9日、英国王立協会(British Royal Society)の専門誌「バイオロジー・レターズ(Biology Letters)」に発表された。

 マーシュハリアーとも呼ばれるタカ科の鳥、ヨーロッパチュウヒ(学名:Circus aeruginosus)のオスの大半は羽の色がグレーだ。一方、メスは全身茶色で頭と肩だけが白い。ところがオスのうち3分の1強は、メスとそっくりの配色をしている。

 この「女装」の意味を見出そうとした生物学者たちは、フランス中西部の湿地帯マレ・ド・ブルアージュ(Marais de Brouage)でヨーロッパチュウヒの生態を観察した。

 スペインの研究所Instituto de Investigacion en Recursos Cinegeticosの研究チームは繁殖期のつがい36組について、オスの配色、メスの配色、「メスのようなオス」の配色に塗ったデコイ(模型)3種類のうちどれか1種類を、各つがいの巣の近くに置いた。

 すると、典型的なオスの配色の羽をもったオスが、巣を守ろうとして同じオスの配色のデコイを攻撃する率は、他の2種類のデコイに比べて3倍高かった。

 さらにもっと衝撃的だったのは、メスの配色をしたオスの行動だった。メスの配色をしたオスたちは、過剰なまでにメスの役割を「演じて」いた。彼らは「嫉妬」から、オスのデコイよりも、メスのデコイを攻撃するほうが2倍以上、多かった。

 研究者たちは、徹底的にメスを模倣することで、メスに見えるオスのほうが、他のオスとの競争の中で優位に立てるのではないかと考えている。メスのような外見で攻撃性を控えて行動すれば、競争相手の他のオスから攻撃されにくく、メスに近づいて恋をするチャンスが増えるというわけだ。またライバルと争うことなく、食物が豊富にある生息地に進入していくチャンスもできる。

 他の鳥でメスと似た配色の羽を持つオスがいるのはエリマキシギだけだが、この場合もやはりメスに近づくために「女装」している。(c)AFP