インターネットが可能にした南米アマゾンの「遠隔学校」
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【8月24日 AFP】生活環境が厳しい上に生徒が少ないため、教師たちが赴任したがらない南米アマゾンに、インターネットが教育の機会を芽生えさせている。
ブラジル・アマゾナス(Amazonas)州の州都マナウス(Manaus)の教師たちは、トゥンビラ(Tumbira)村に授業をストリーミング配信している。この遠隔教育がなければ、アマゾン川流域の子どもたちは学校教育をあきらめるか、学校がある場所まで船旅をしなければならない。
そのトゥンビラに、アマゾナス持続可能財団(Amazonas Sustainable Foundation、FAS)が遠隔学校の施設を作った。ここにたどり着くにはネグロ川(Rio Negro)を船で行く以外に方法はないが、教室の他に図書室やハンモックをつって眠れる宿泊施設もある。
19日にAFPの取材に応じたトゥンビラの教育ディレクター、イソレナ・ガリド(Izolena Garrido)氏は「われわれはまず遠隔教育と学習のモデルを確立させ、生徒がいてもいなくても、とにかくこの学校を軌道に乗せようと頑張った」と振り返った。
ガリド氏はクラスを補助できる地元教員のリストを作り、またくつろいだ雰囲気の遠隔学校に保護者たちを招待した。こうした過程を経て、トゥンビラ以外にもアマゾンの6つのコミュニティーの子どもたちが登録し、約1年半前に遠隔教育プロジェクトは始まった。
トゥンビアを訪れたFASのビルジリオ・ビアナ(Virgilio Viana)理事長は「テクノロジーは多くの意味で、改革への扉を開きます」と語る。「わたしたちがここで行っている教育事業はテクノロジー、インターネットのおかげで実現している。インターネットがなければ不可能だったでしょう」
■遜色ない授業内容
トゥンビラでの授業は、発電機が稼動し、その電気でインターネットを無線接続できる午後と夕方に行われる。科目は数学や理科から、応急手当の仕方や保健、体育まである。
子どもたちは教室に設置された薄型モニターに映し出される教師たちを一心に見つめ、授業中の課題や宿題に取り組む。遠く離れた場所にいる教師たちは、ウェブカメラを通して子どもたちの姿を見守る。76人の生徒の1人、エドナルド君(16)は「教室に先生がいるみたいです」と言う。
教室には地元教員がいて、生徒たちの質問に答えたり課題を手伝っている。地元教員の1人、ドスサントスさんは「すごい体験ですよ。子どもたちはコンピューターやインターネットが大好きですし、遠隔教育は時間の節約にもなります。全部の授業計画を自分で立てなくてよいので、私はダンスや演劇など子どもたちのための他の課題に集中できます」と語った。ドスサントスさんによると、授業が終わってしまうと遠く離れた場所にいる先生たちには質問できないので、授業中の集中度も上がるという。
生徒たちはチャットルームでアイコンをクリックしてバーチャルに手を挙げ、質問をしたり、自分の意見を述べる。宿題は、図書室やインターネットで調べ物をしたり、地元教員に手伝ってもらいながら学校で済ませる。
生徒のアンジェリアンさん(12)は、「この学校は他の学校と違うところもあるけど、先生が教えてくれるから、やっぱり学校です。去年私は別の学校に通っていたんですけど、1クラスの人数が多すぎてめちゃくちゃでした。今は1クラスの人数が少なくて、前よりもよく授業に参加できています」と言う。
■持続可能なコミュニティーにつながる学習
またこの学校では畑で野菜を育て、持続可能な林業や木工などについても学んでいる。「生徒たちが自分たちのコミュニティーに戻ったときに開発に役立つスキルを身につけるのが目標です」とガリド氏。
コンピューターとインターネットについて学ぶ授業もあり、みんなで「アマゾンへの情熱」というブログを作り、デジタル写真をアップロードしている。生徒たちは電子メールアドレスやフェイスブック(Facebook)のアカウントも持っている。
親子で遠隔学校に通っている人もいる。17年前からトゥンビアに住んでいるマリアさん(40)は、数年しか学校教育を受けないうちに結婚して家庭を築いた。今は10代の息子2人と一緒にこの学校で学んでいる。
自宅前で取材に応じたマリアさんは「今、また学べるのはありがたいこと。私だけでなく他の女性にとってもです」と語った。遠隔教育がなくても学校に戻っていたかとの質問には、力を込めて「いいえ」と答えた。
この遠隔学校はFASと、アマゾンの文化を存続させようとしているもう1つのNGOから援助を受けている。
■将来は大学も
インターネット技術によってこうした学校が可能になったものの、都市部にある学校からは、遠隔教育に教育予算が取られていると批判する声も上がっている。
ガリド氏は「このシステムがうまくいくかどうか疑問視する声もあった。遠隔教育を機能させないように、外部からの介入も相当あったようだ」と語る。しかしFASが作った都会的な学校施設を見て、アマゾンで働くことに関心を持つ研究者や都会の教師も増えている。
ビアナ氏は、今は2学級しかないこの遠隔学校が、熱帯雨林と調和のとれた大学になる日を夢見ている。高校の勉強を終え、さらに勉強を続けたいという学生もすでに現れているという。(c)AFP/Glenn Chapman
ブラジル・アマゾナス(Amazonas)州の州都マナウス(Manaus)の教師たちは、トゥンビラ(Tumbira)村に授業をストリーミング配信している。この遠隔教育がなければ、アマゾン川流域の子どもたちは学校教育をあきらめるか、学校がある場所まで船旅をしなければならない。
そのトゥンビラに、アマゾナス持続可能財団(Amazonas Sustainable Foundation、FAS)が遠隔学校の施設を作った。ここにたどり着くにはネグロ川(Rio Negro)を船で行く以外に方法はないが、教室の他に図書室やハンモックをつって眠れる宿泊施設もある。
19日にAFPの取材に応じたトゥンビラの教育ディレクター、イソレナ・ガリド(Izolena Garrido)氏は「われわれはまず遠隔教育と学習のモデルを確立させ、生徒がいてもいなくても、とにかくこの学校を軌道に乗せようと頑張った」と振り返った。
ガリド氏はクラスを補助できる地元教員のリストを作り、またくつろいだ雰囲気の遠隔学校に保護者たちを招待した。こうした過程を経て、トゥンビラ以外にもアマゾンの6つのコミュニティーの子どもたちが登録し、約1年半前に遠隔教育プロジェクトは始まった。
トゥンビアを訪れたFASのビルジリオ・ビアナ(Virgilio Viana)理事長は「テクノロジーは多くの意味で、改革への扉を開きます」と語る。「わたしたちがここで行っている教育事業はテクノロジー、インターネットのおかげで実現している。インターネットがなければ不可能だったでしょう」
■遜色ない授業内容
トゥンビラでの授業は、発電機が稼動し、その電気でインターネットを無線接続できる午後と夕方に行われる。科目は数学や理科から、応急手当の仕方や保健、体育まである。
子どもたちは教室に設置された薄型モニターに映し出される教師たちを一心に見つめ、授業中の課題や宿題に取り組む。遠く離れた場所にいる教師たちは、ウェブカメラを通して子どもたちの姿を見守る。76人の生徒の1人、エドナルド君(16)は「教室に先生がいるみたいです」と言う。
教室には地元教員がいて、生徒たちの質問に答えたり課題を手伝っている。地元教員の1人、ドスサントスさんは「すごい体験ですよ。子どもたちはコンピューターやインターネットが大好きですし、遠隔教育は時間の節約にもなります。全部の授業計画を自分で立てなくてよいので、私はダンスや演劇など子どもたちのための他の課題に集中できます」と語った。ドスサントスさんによると、授業が終わってしまうと遠く離れた場所にいる先生たちには質問できないので、授業中の集中度も上がるという。
生徒たちはチャットルームでアイコンをクリックしてバーチャルに手を挙げ、質問をしたり、自分の意見を述べる。宿題は、図書室やインターネットで調べ物をしたり、地元教員に手伝ってもらいながら学校で済ませる。
生徒のアンジェリアンさん(12)は、「この学校は他の学校と違うところもあるけど、先生が教えてくれるから、やっぱり学校です。去年私は別の学校に通っていたんですけど、1クラスの人数が多すぎてめちゃくちゃでした。今は1クラスの人数が少なくて、前よりもよく授業に参加できています」と言う。
■持続可能なコミュニティーにつながる学習
またこの学校では畑で野菜を育て、持続可能な林業や木工などについても学んでいる。「生徒たちが自分たちのコミュニティーに戻ったときに開発に役立つスキルを身につけるのが目標です」とガリド氏。
コンピューターとインターネットについて学ぶ授業もあり、みんなで「アマゾンへの情熱」というブログを作り、デジタル写真をアップロードしている。生徒たちは電子メールアドレスやフェイスブック(Facebook)のアカウントも持っている。
親子で遠隔学校に通っている人もいる。17年前からトゥンビアに住んでいるマリアさん(40)は、数年しか学校教育を受けないうちに結婚して家庭を築いた。今は10代の息子2人と一緒にこの学校で学んでいる。
自宅前で取材に応じたマリアさんは「今、また学べるのはありがたいこと。私だけでなく他の女性にとってもです」と語った。遠隔教育がなくても学校に戻っていたかとの質問には、力を込めて「いいえ」と答えた。
この遠隔学校はFASと、アマゾンの文化を存続させようとしているもう1つのNGOから援助を受けている。
■将来は大学も
インターネット技術によってこうした学校が可能になったものの、都市部にある学校からは、遠隔教育に教育予算が取られていると批判する声も上がっている。
ガリド氏は「このシステムがうまくいくかどうか疑問視する声もあった。遠隔教育を機能させないように、外部からの介入も相当あったようだ」と語る。しかしFASが作った都会的な学校施設を見て、アマゾンで働くことに関心を持つ研究者や都会の教師も増えている。
ビアナ氏は、今は2学級しかないこの遠隔学校が、熱帯雨林と調和のとれた大学になる日を夢見ている。高校の勉強を終え、さらに勉強を続けたいという学生もすでに現れているという。(c)AFP/Glenn Chapman