【7月25日 AFP】クジラの巨大なペニスから、小粒サイズの野ネズミの睾丸(こうがん)や、ウシの陰嚢(いんのう)で作ったランプシェード(ランプのかさ)まで、アイスランドの小さな「ペニス博物館(Phallological Museum)」には全部ある――それに最近、ヒトのサンプルの展示も始めた。

「これが最大だ」と、同博物館創設者でキュレーターのSigurdur Hjartarson氏(69)は、特大サイズのプラスチック製のケースを見せた。中には、液体に浸された灰白色の物体が、小ぶりの木の幹のような太さと、大人の人間ほどの背丈でそびえていた。

 重さ70キロ、全周170センチのマッコウクジラのペニスの標本だ。だが、Hjartarson氏は「これはほんの先っぽだけさ」と解説する。「ペニスの全長は実際、5メートルで、重さは350から450キログラムになるよ。ただもちろん、マッコウクジラの全体重はおよそ50トンあるがね」と、灰色のひげをたくわえたHjartarson氏は、含み笑いをした。

 世界で唯一のペニス博物館には、アイスランドのほ乳類46種類を中心に、276点の標本が展示されている。

 元校長のHjartarson氏の収集は、1974年に始まった。友人たちとの雑談で、子どものころ牛たちを放牧するために、牛のペニスで作った鞭(むち)を与えられた思い出話を語ったところ、友人の1人が、同じ鞭を新調して贈ってくれた。

 この話を聞きつけて、そばの捕鯨基地で働いている仲間たちが「クジラのペニスを持ってきはじめた」という。そこからHjartarson氏は、自ら収集を始めるようになった。

■「ホモサピエンスにがっかり」

 博物館は1997年、同国首都レイキャビク(Reykjavik)で、62点の標本の展示で開館した。2004年には、北部にある人口2200人の小さな漁村、フーサビク(Husavik)に移転した。

 博物館の外には巨大なペニスの彫刻があり、見逃す方が難しい。5~9月の開館シーズンに1万1000人の来場者を記録したこともある。だが、ことしは初めてのヒトの標本が加わったことから、さらに来場者は増えるかもしれない。

 標本の提供者はHjartarson氏の友人。Hjartarson氏いわく「アイスランド観光のパイオニア的存在で女たらし」の友人は、ことし1月に死去した。95歳だった。この男性は、生前の1996年に、博物館に臓器を提供することを約束していたという。「彼のことを15年待ってたよ」と、Hjartarson氏は冗談を飛ばした。

 だが来館者の男性(43)は、クジラには驚嘆させられたが、「ホモサピエンスにはなんか、がっかりした」と語る。

 保存状態が良くなかったのも理由の1つだが、Hjartarson氏はそんな不運も笑い飛ばす。「関係ないよ。彼は年寄りだったしな。今度は若くてもっとでかくて、もっといい奴を手に入れるさ」と、Hjartarson氏は述べ、英国人、ドイツ人、米国人から提供の申し出が届いていると付け加えた。

 フーサビクの住民は当初、疑いのまなざしを向けていた。「だが、ポルノ要素がここに全く無いことを知り、住民たちは受け入れた」とHjartarson氏。博物館の電話や壁掛け時計、シャンデリアには、Hjartarson氏の彫った木製ペニス像が飾られている。

 Hjartarson氏は、50年連れ添った妻次第では、自分もコレクションに寄贈を検討していると語る。「もし妻が先に死ねば、私の標本がここに加わるだろうね。でも私が先に死んでしまうと、わからないな。妻が嫌だと言うかもしれない」

(c)AFP/Nina Larson