【7月19日 AFP】ナチス・ドイツ(Nazi)のアウシュビッツ・ビルケナウ(Auschwitz-Birkenau)強制収容所で、収容された人びとに対して数々のおぞましい医療実験を行い、「死の天使」と呼ばれた医師でナチス親衛隊の将校だったヨーゼフ・メンゲレ(Josef Mengele)の日記などの手稿が、米国で21日、競売にかけられる。

 日記は第2次世界大戦(World War II)後、メンゲレが中南米に逃亡した後の1960~1975年に書かれたもの。哲学的思索や自伝的内容、詩などがつづられている。

 21日にオークションを開催する米コネティカット(Connecticut)州のアレクザンダー・オートグラフス(Alexander Autographs)によると、小さなノートブック複数冊に書かれた「秘密の日記」は約3500ページに及ぶ。アレクザンダー・オートグラフスは歴史的な手稿を専門に扱っている。

 日記は2004年、サンパウロ(Sao Paulo)でメンゲレとかつて暮らしていたドイツ人カップルの自宅から警察が押収し、その後、生涯で2回しか父と会わなかったメンゲレの息子、ロルフ・メンゲレ(Rolf Mengele)氏に引き渡された。

 オークション主催者によると出品者は「米国企業」だが、それ以上の詳しい情報は明らかにされていない。予想落札価格は30万~40万ドル(約2400万~3200万円)で、いくつかの団体や収集家などが落札を希望しているという。

■大勢をガス室に送った「死の天使」

 メンゲレは1943年から、アウシュビッツ収容所に送られてきた人びとの選別に協力した。強制労働に適さないとみなされた人は致死性のガス「チクロンB(Zyklon B)」で殺害された。

 第2次大戦末期にヨーロッパを出て、1950年代初頭にはアルゼンチンに到着。国際刑事警察機構(インターポール、Interpol)の捜査を逃れるため、1961年にパラグアイへ逃亡した。その後ブラジルに行き、サンパウロで暮らした。最後まで捕まることはなく、67歳だった1979年にブラジルで死去した。メンゲレの死は、遺体を掘り起こして調査した1985年になって初めて確認された。(c)AFP/Paola Messana