【7月18日 AFP】ニュージーランド北島のプカハ(Pukaha)自然保護区には、息をひそめて白いキウイの登場を待ちわびる数百人の人々の姿があった。先住民族のマオリ(Maori)人たちにとって、この鳥は神聖な存在でもある。

 白色のキウイが登場すると、群衆からは一斉にため息がこぼれた。そのため息は、マオリ人たちのような神聖な意味合いではなく、その鳥の愛らしさがもたらしたもののようだ。

 そのオスのキウイは、白いテニスボールに、細長いくちばしと3本の指を持つがっしりとした足がついた姿。名前は「マヌクラ(Manukura)」。マオリ語で「主たる地位の」という意味の言葉からとられた。5月1日にウェリントン(Wellington)北部の同保護区で誕生した、飼育下で生まれた初めての白色のキウイだ。

 ニュージーランドを象徴する動物であるキウイは、オコジョやネズミ、フェレットなど外来の捕食動物の脅威にさらされ、絶滅が危ぶまれている。だが、プカハ保護区のキャシー・ホーカモー(Kathy Houkamau)氏によると、白いキウイの誕生で、キウイ保護に対する関心がこれまでになかったほどに高まっているという。マヌクラはキウイ保護活動のシンボルになりつつある。

「マヌクラは、キウイ全体のPR役として活躍している。白いキウイはとても珍しく、多くの関心が集まっている。多くの人がプカハやキウイ全体に関心を持ち始めている」(キャシー・ホーカモー氏)

■国際的な注目集める

 通常、キウイは茶色の羽毛を持つが、マヌクラはもともと羽毛に白い斑点を持った系統から生まれた。「アルビノ(先天性の色素欠乏)ではない。持っていた劣性遺伝子で、全身が白になった」と、保護区警備員のトム・スタッドホルム(Tom Studholme)氏は語る。「(全身白のキウイが)次にいつ生まれるのかは分からない。来年も白いキウイが生まれるかもしれないし、今後50年、100年生まれないかもしれない」

 スタッドホルム氏によると、マヌクラの誕生はマオリ人たちにとって祝うべき出来事だった。マオリ人たちは、白いキウイを「新たな始まり」や「再生」のしるしと考えている。「地元部族にとって、文化的に非常に大きな意味がある」と、スタッドホルム氏は説明する。部族の長老たちは、マヌクラが生まれてすぐに祭礼を行って祝福したという。

 長老たちの祭礼は科学的なキウイの繁殖プログラムを行なっているプカハ保護区にも祝福をもたらしたようだ。2005~10年までのキウイのヒナの誕生数は年平均2羽だったが、ことしはすでに14羽も誕生している。

 ホーカモー氏によると、過去2か月でマヌクラを見ることのできる日の来場者数は、普段の日の倍になった。「白いヒナが生まれたことで、ここは何もかもが変わった。突然、国際的な注目を集め、みんながマヌクラを見たいと思った」と、ホーカモー氏は述べ、「わたしは世界をマヌクラ以前とマヌクラ以後というふうに考えるようになっている」と語った。(c)AFP/Erica Berenstein

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