【6月28日 AFP】アパルトヘイト反対運動の闘士として送った獄中生活から、後天性免疫不全症候群(エイズ、AIDS)の蔓延に対する警鐘まで、南アフリカのネルソン・マンデラ(Nelson Mandela)元大統領(92)の「知恵」が凝縮している2000の言葉を集めた新刊書が27日、発表された。

 発行元のネルソン・マンデラ財団(Nelson Mandela Foundation)によると、同財団には毎年世界中の個人や団体から数千単位で「マンデラ氏がこう語ったと言われているが本当か」といった問い合わせが寄せられており、それが今回の本を生むきっかけとなった。

 編集を行ったセロ・ハタン(Sello Hatang)氏とサム・ベンター(Sam Vente)氏は、60年分以上に及ぶマンデラ氏の演説から私的な文書、手紙、録音された言葉などを徹底的に調べ、『Nelson Mandela by Himself』(「マンデラが語るマンデラ」)にまとめた。少数派の白人による南ア支配に対し解放を求める指導者として戦い、ノーベル平和賞(Nobel Peace Prize)を受賞し、南アフリカ初の黒人大統領になるのは、気が遠くなるような道のりだ。ハタン氏は「ネルソン・マンデラという人物について、人びとにもっと知ってもらえればと願っている」と語っている。

 マンデラ氏の言葉は「アカウンタビリティ」から「シオニズム」まで300程度のカテゴリーにアルファベット順で整理されている。「母」、「子ども時代」といった個人的なテーマも含まれている。例えば1981年にロべン島(Robben Island)の収容所からは「よく育った子どもほど、人生が報われたと親に感じさせてくれる存在はない」と書いている。

 リーダーシップに関するマンデラ氏の考え方が垣間見える言葉もある。1993年のある会話では「リーダーには、誰にも相談せずに単独で動き、後から自分が成し遂げたことを組織に示すことが必要とされる時は絶対にある」と述べている。また世界で最も優れた指導者と言われ、尊敬を集めてきたマンデラ氏は「庶民的な親しみやすさは大きな利点になる。特に国家元首の場合には」とも語っている。
 
 自伝『自由への長い道(Long Walk to Freedom)』の未完の続編からは27年の獄中生活を振り返り「私の獄中の同志たちは、公正と理念の人物たちだ」との言葉が収録されている。94年の南ア史上初の全人種参加選挙で選ばれ、大統領に就任した翌年には「和解とは、過去の不当の遺産を共同作業で正していくことだ」と語っている。

 マンデラ氏は7月18日で93歳になる。今年1月に急性肺炎で入院して以降、健康状態が心配されているが、前週はミシェル・オバマ(Michelle Obama)米大統領夫人がマンデラ氏を訪れ会談した際の写真が公開された。

 マンデラ氏の言葉を集めた新刊は、発行の前日になって初めて本人も手にした。ハタン氏は「機会があるときに読んで、ぜひ驚いてもらいたい」と語った。(c)AFP