喫煙者にスリムな人が多い理由、米科学者が特定
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【6月12日 AFP】ニコチンが脳内で食欲抑制剤として働く作用を突き止めたと、米科学者らが9日、発表した。肥満対策に有効活用される日が来るかもしれない。
米エール大(Yale University)のチームが行った研究結果が、米科学誌サイエンス(Science)に掲載された。喫煙者は喫煙しない人びとと比べて痩せている傾向があるが、これは、脳の視床下部にある満腹感を知らせるニューロンをニコチンが活性化するためであることがわかったという。
論文の上席著者であるエール大のマリナ・ピチョット(Marina Picciotto)教授(神経生物学・薬理学)は「体重が増えるからたばこをやめたくない、という人は多い。(この研究は)最終的には、禁煙を始めた人びとの体重維持に活用したいし、たばこを吸わない人で肥満解消に苦しんでいる人びとの助けにもなるかもしれない」と語った。
■満腹感もたらす神経に作用
ピチョット氏の研究室では、うつ病治療のための治験薬が、ニューロンの表面にあるアセチルコリン受容体のうちのニコチン受容体になんらかの影響を及ぼすかどうかを調べていた。その実験の中で、治験薬を投与されたマウスの方が、投与されていないマウスに比べて少食であることに気づたという。
この発見を受けて、カナダ・オタワ(Ottawa)のカールトン大学(Carleton University)と米ハワイ大(University of Hawaii)のチームも研究に加わり、治験薬が特定のニコチン受容体を刺激し、そのニコチン受容体がさらに視床下部のプロオピオメラノコルチン(POMC)と呼ばれるニューロン群に指令して満腹感がもたらされることがわかった。
またこの受容体は、喫煙者のニコチン摂取欲求を誘発する受容体とは独立したものだった。このことから「脳の報酬系を刺激することなく、食欲抑制効果だけを得ることが可能かもしれない」とピチョット氏は語った。(c)AFP