【6月10日 AFP】英国のエリザベス女王(Queen Elizabeth II)の夫として、英国史上最も長い期間、国家元首の配偶者であるフィリップ殿下(Prince Philip)が10日、90歳の誕生日を迎える。

 バッキンガム宮殿(Buckingham Palace)には、世界中から2000通にも上るバースデーカードが届いている。しかし、きまじめで、時に無愛想な面も知られるフィリップ殿下は、90歳の誕生日も普段通り、英軍将校の会議に出るなど公務をして過ごす予定だ。

 健康さは驚異的だが、殿下本人は、年齢相応にスローダウンしたスケジュールをと願っている。しかし時にスキャンダルにもなってきた皮肉は健在どころか、人生90年を振り返るコメントなどを求められた暁には、すぐさまお馴染みの毒舌ぶりが顔を出す。

 英BBC放送のインタビューでは、国家元首の配偶者という自分の役回りについて「試行錯誤」したことを認めながらも、それが上手くいったかどうかと尋ねられると「そんなことはどうでもいい。そもそも、私が何を考えているのか、誰が気にするというのだ?」と質問を突き返した。

 フィリップ殿下の出身は、ギリシャやデンマークの王家であるグリュックスブルク家。1921年6月10日、ギリシャ・イオニア諸島にあるコルフ島(現ケルキラ島)邸宅の台所で誕生した。家庭内が落ち着かない幼少時代を過ごした後、英海軍に入隊。1947年にエリザベス王女と結婚した後も海軍で昇進を続けたが、1952年に王女が女王に即位し、フィリップ殿下は軍務に別れを告げた。

 軍を退役したことについて、フィリップ殿下はITVテレビに「残念だった」と明かし、しかし「女王と結婚した身としては、私の第一の務めはできる限り最善の方法で彼女に仕えることだった」と述べた。

 以来、自らの役割を築き上げながら、各地を訪問する女王の横には必ずフィリップ殿下の寄り添う姿があり、時にアドリブのコメントで国民を盛り上げてもくれたが、中にはきわどい皮肉や爆弾発言も多々あった。1998年にはパプアニューギニアでトレッキングをして来た英国人学生に「よく食べられずに帰ってきたね」と声をかけたこともある。

 フィリップ殿下は約800もの組織・団体の後援者でもあり、自然保護から若者支援まで幅広い分野で活動してきた。しかし90歳になり、ようやくそうした公務からの引退を決意したとBBCに語った。「私は自分の役目を果たしたと思う。少し自分自身のために楽しみたい。責任を減らし、多忙な日程を改め、準備もしたくないし、何を言おうか考えたりもしたくない。それよりも何よりも記憶が悪くなっていて、人の名前が覚えられない。人生の終わりに近づいているということだ」

  バッキンガム宮殿はフィリップ殿下の90歳を記念し、殿下に関する「90のエピソード」を発表した。LPG自動車のタクシーを運転してロンドンを回ったことがあることや、大学対抗ティドリーウィンス(おはじき)選手権のトロフィーをデザインしたことなどが紹介されている。

 90歳の誕生日の公式祝賀行事は、ウィンザー城(Windsor Castle)のセント・ジョージ教会(Saint George's Chapel)で王室のメンバーが出席して礼拝を行った後、レセプションが用意されている。(c)AFP

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