【5月16日 AFP】スイスのチューリヒ(Zurich)州で15日、末期患者などに対する自殺ほう助の制限・禁止の是非を問う国民投票が行われたが、ほう助容認派が圧倒的多数を占める結果となった。

 国民投票の動議は、地元保守政党「スイス連邦民主同盟(EDU/UDF)」が提出したもので、ほう助の対象を同州に1年以上居住した者に制限するという内容。しかし、反対21万8602票(78.4%)で、動議は否決された。

 自殺ほう助そのものを禁止する案も、84.5%の反対で否決された。

 スイスでは安楽死が合法化されており、私利私欲に基づかない場合は、致死量の薬物を提供するなど「消極的な自殺ほう助」を容認している。薬物を直接飲ませたり、投与する「積極的な自殺ほう助」は認められていない。

 こうした中、スイスは「自ら死を選びたい」人びとにとって「安楽死旅行(death tourism)」の中心地と化しており、チューリヒに拠点を置く自殺ほう助クリニック「ディグニタス(Dignitas)」では過去10年で1000人以上の外国人の安楽死を手助けしてきた。ほとんどは不治の病の末期患者たちだという。

 国民投票の結果を受け、地元の自殺ほう助団体「エグジット(Exit)」のベルンハルト・シュター(Bernhard Sutter)副代表は「死ぬ権利は個人の問題であり、国や教会でさえとやかく口を出すことではない。投票結果は、他者に救いの手を差し伸べるスイスの人道的伝統をはっきり表したものだ」と述べた。(c)AFP

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