【4月12日 AFP】夜8時、ケニアの首都ナイロビ(Nairobi)で最も過酷といわれるスラムのあちこちから、アマチュアの5人制サッカーチームの若者たちが集まってきた。

 ここマザレ(Mathare)では危険な夜のストリートを避けるため、若者たちは日が暮れるずっと前に家に帰ってしまっていた。しかしここのスタジアムにケニアで初めて太陽光発電による投光照明設備でナイターができる設備ができてからは夜も練習できるようになった。

 マザレ希望のフットボール・センター(Mathare Football for Hope Centre)の管理者スティーブン・ムチョキ(Stephen Muchoki)氏は、「すでに変化が見えている。夜間トレーニングをしたいというチームの申し込みがたくさんある」と語った。

 この変化は2010年に史上初めてアフリカ大陸でサッカーW杯が行われたことの直接の結果だ。サッカーW杯南アフリカ大会(2010 World Cup)の後、国際サッカー連盟(FIFA)はスポーツと健康、教育振興の目的でアフリカ全土から「希望のフットボール・センター」を設置できる20団体を選んだ。

■中国企業が寄贈

 そのひとつがナイロビのマザレ・スラムのマザレ青年スポーツ協会(Mathare Youth Sports Association)で、米ニューヨーク証券取引所(New York Stock Exchange)に上場している中国の太陽光発電製品メーカー、英利緑色能源控股(Yingli Green Energy Holding)から真新しい太陽光発電による投光照明設備が寄贈された。

 1日に4時間、明るい時間が増えたことに加え、赤道直下の日差しが照りつける中で練習しなくても済むようになり、選手たちは喜んでいる。「昼間は日光が強すぎるんだ。でもこれならば必死にならなくても、ボールが楽に見える」と、U-17のケニア代表の1人、16歳のエドウィン・イブサ(Edwin Ivusa)君は言う。イブサ君は5年以内のA代表入りを目指して練習に励んでいる。

 マザレ青年スポーツ協会ではスポーツ・トレーニングだけでなく、地元でHIV・エイズに関する啓蒙活動や、病気感染を予防するための清掃グループの組織化なども行っている。マザレ・スラムは泥とトタン板でできた小屋の集まりで、衛生設備やインフラが整っていないからだ。

 ナイロビで投光照明設備があるスタジアムは、これまでニャヨ国立競技場(Nyayo National Stadium)とモイ国際スポーツセンター(Moi International Sports Centre)だけだった。この2つのスタジアムは国営電力会社が供給する電気を使用しており、ケニアで太陽光発電による投光照明設備を備えたスタジアムがあるのはマザレだけだ。(c)AFP/Aileen Kimutai