【3月28日 AFP】東北地方太平洋沖地震・津波では、多数のペットたちも被災した。飼い主とはぐれたり死別したペットたちは、今も被災地に取り残され、けがやエサ不足のなか必死に生き抜こうとしている。

 被災地では数は少ないながら動物専門の救助隊も活動している。震災直後の数日は「被災地で動物の姿を見つけることはできなかった」と、動物愛護団体PETA(動物の倫理的扱いを求める人々の会)のアシュリー・フルーノ(Ashley Fruno)氏はAFPに語った。「泥の上に足跡をいくつか見つけたけれど、途中で途切れてしまっていた」

 しかしその後、ゆっくりではあるが着実に、飼い主たちとはぐれたペットたちが姿を見せはじめた。倒壊家屋の中から、自力で外に出てきた動物たちも多い。

 震災後まもなく複数の動物愛護団体が結成した「JEARSJapan Earthquake Animal Rescue and Support)」は、被災地でペットの保護活動を行っている。ボランティアの獣医師らがけがをしたペットを治療しているほか、飼い主を失ったペットの一時避難先探しも引き受けている。

■避難所でトラブルも、飼い主には心の支えに

 JEARSは、避難所でのペットをめぐるトラブルにも対応している。獣医師の佐々木一益(Kazumasu Sasaki)さんによると、避難所ではペット連れの被災者とそれ以外の被災者との間で摩擦が起きている。動物アレルギーがある人もいれば、鳴き声や犬同士のケンカに苦情を言う人もいる。

 ペット連れでの避難所入りが拒否され、損壊した自宅にとどまることを選ぶ被災者も出ている。

 JEARSコーディネーターのイザベラ・ガラオン青木(Isabella Gallaon-Aoki)さんは、ペット連れで避難した被災者に対し、一時的にペットを施設に預けるほうが良いと説得しているが、なかなか難しいと語る。「ペットを家族の一員と考える人が多い。震災の後で、ペットだけが心のよりどころという人もいる」

 夫と飼い犬モモとともに仙台市内の避難所に暮らすタカザワ・トミさん(65)は、苦情を受けながらも、モモを手放す気はないと断言した。「モモだけを連れて、他には何も持たずに逃げてきたんです。一緒にいないのは想像できません。ここで飼ってはいけないと言われたら、出て行くつもり」

■ネコの島の奇跡、飼い主探して泳ぎ続けた秋田犬

 震災では、津波で2キロも内陸まで流されて水田から救助されたイルカなど、奇跡的に助かった動物たちの話も少なくない。

 人口より猫の数が多く「猫島」として有名な宮城県田代島(Tashirojima)も津波に襲われたが、ほとんどの猫たちは奇跡的に無事だった。

 仙台市在住のカマタさんは、大津波が来ると近隣住民に知らせて回った後で、飼っていた秋田犬を助けに自宅に戻ろうとしたが、押し寄せる波に阻まれてしまった。「もうだめだと思いました。すごく悲しかった」

 だがその夜、カマタさんは身を寄せた避難所の外で犬のほえる声を聞いた。「あいつでした。きっと泳いでわたしを探し出したんでしょう。海水をたくさん飲んでいて、吐いてばかりで、どのみちもう助からないと思いました。でも、持ちこたえてくれました」と、カマタさんは語った。(c)AFP/Giles Hewitt