【3月2日 AFP】ロシア・シベリア(Siberia)地方の大都市の市長が公式会合の席上、「当局にはあいにくホームレスを撃つ権限がない」と述べ、激しい怒りが巻き起こっている。

 シベリア地方の大都市チタ(Chita)のアナトリー・ミハリョフ(Anatoly Mikhalev)市長は2月24日、市議会議員たちを前に、特に冗談めかすこともなく、「ホームレスはあらゆる人にとっての問題だが、あいにくわれわれには彼らを撃つ権限がない」と述べた。

 さらにホームレスは個人が選択したライフスタイルだという考えをほのめかし、「わが国は各種の人権条約に署名しており、誰でも自分が好きなライフスタイルを選べる。そして、ああいう人びと(ホームレス)はああいうスタイルが好きなようだ。他人の迷惑になる多くの問題を起こしているというのに」と付け加えた。

 スターリン専制下で横行した恣意(しい)的な処刑を思い起こさせるこの発言を、国営放送は厳しく批判する論調で報じた。またウラジーミル・ルキン(Vladimir Lukin)ロシア連邦人権委員会議長は、「人口30万の都市を治める人物からこのような発言がなされたことに愕然としている」と述べ、ミハリョフ市長を強く批判した。

 ミハリョフ市長は、翌25日に「発言は悪い冗談だった」と述べて事態の収拾を図り、さらに人びとの怒りを鎮めようと「(ホームレスを)撃てないというコメントは悪いジョークだったことを認める。文字通りに受けとったみなさんに陳謝する」とする声明を発表した。

■ロシア全土に150~420万人

 「BOMZh」という耳障りの悪い略語(「住所不定の人びと」の頭字語)で呼ばれているロシアのホームレスは、厳しい気候条件と社会的格差の下、驚くべき生活条件にさらされている。

 ミハリョフ市長の広報官によると、3000人のホームレスがいるチタ市には120人収容の簡易宿泊所が1つあるだけだ。冬季の気温は零下30度まで下がる。

 ロシア紙ベドモスチ(Vedomosti)によるとロシア全国のホームレス数は内務省発表で最大35万人だが、専門家の間では150~420万人に上るとみられている。

 ホームレスを支援する活動家たちは、ミハリョフ市長の発言は、ロシア全土の地下道や公共交通の施設内で力なくたたずむ姿が見かけられるホームレスに対する多くの普通のロシア人の態度を反映したものだと批判している。(c)AFP/Stuart Williams