【2月2日 AFP】エバンス・ワドンゴ(Evans Wadongo)さんはまだ25歳に満たないが、自ら開発したソーラーランプを無償提供することにより、ケニア人数万人の生活を向上させてきた。

 ワドンゴさんはケニア西部の村で生まれ育った。宿題は石油ランプのもとでやっていたが、燃料が尽きれば宿題もそこまで。宿題を完成させられず、学校でむち打ちの体罰を受けていたものだ。石油ランプが吐き出す煙により視力も大幅に低下した。

 だが、ワドンゴさんはがんばって大学に進学した。大学生になり、自分が育った村のような貧しい共同体における子どもの境遇を改善する手だてはないかと考え始めた。

 常に人の役に立ちたいと願ってきたワドンゴさん。ソーラーランプを発明したのは、弱冠19歳のときだった。必要な部品は学生ローンで調達した。

「この時はまだ、大々的なプロジェクトになるとは予想もしていませんでした。(ソーラーランプは)おばあちゃんにプレゼントしたくて作ったんです」

 2004年、仲間と「Use Solar, Save Lives(太陽エネルギーで命を救おう)」プロジェクトを立ち上げ、ソーラーランプの生産を始めた。これまでに1万5000個以上を作り、石油ランプに頼っている貧しい共同体に配布してきた。2015年までに生産個数を10万個の大台に乗せるのが目標だ。ワドンゴさんは、ソーラーランプが配布された故郷の村で、高校に進学する子どもが増えてきている現状を目の当たりにした。

 ワドンゴさんにとってソーラーランプは、「貧困生活から抜け出させる」ための手段だ。政府には何も期待していない。「彼らは権力の座に居座るために人民を貧困状態のままにしておきたいのです」とワドンゴさん。

 ランプを届けた各家庭には、石油ランプの燃料分浮いたお金を貯金するよう指導している。ある程度貯まったお金を持ち寄れば、魚の養殖やウサギの繁殖などのプロジェクトに乗り出すことが可能になる。

■とある村にて
  
 首都ナイロビ(Nairobi)から50キロのチュンビ(Chumbi)村に暮らすジェニファー・ダビッド(Jennifer David)さん(47)もソーラーランプの恩恵を被った1人だ。

 泥壁の家の隣には、水不足のために立ち枯れたトウモロコシの畑。日雇い労働者の夫の稼ぎは少なく、ウサギの繁殖で得る収入もごくわずか。5人いる子どもの1人は病気で寝たきりだ。崩れかけた壁には「イエス様を信じています」の大きな文字。そして庭のくいには、充電中のソーラーランプがかけられている。

「このランプのおかげで生活が良くなりました。以前使っていた石油ランプは臭いし煙は出すし、燃料代もかかりました。子どもたちは今では夜でも勉強できます。燃料代を気にせずにね」とジェニファーさん。

■ウガンダにも拡大、失業対策にも

 ワドンゴさんは、このプロジェクトを、ウガンダを皮切りに近隣諸国にも拡大していく予定だ。指導要員の育成も行っており、アフリカ各地のほか、米国の大学生からの志願もあるという。失業者対策として、ランプの生産拠点を分散化することも考えている。

 「モデル」村を作る計画もある。場所は赤道上にあるケニア西部のニャオベ(Nyaobe)村で、ソーラー発電による電力網を張り巡らせ、各家庭でインターネットも利用できるようにする。

「われわれ1人1人が、自分のことより先に他人のことを考えるようになれば、世界はもっと住みやすくなります」とワドンゴさんは話した。(c)AFP/Helen Vesperini