【1月12日 AFP】フランスは世界有数の先進国で、治安も比較的良い国だ。だがフランス人たちは、世界で最も悲観的な国民であることが、BVAギャラップ(BVA-Gallup)が3日発表した世論調査の結果で明らかになった。

 BVAギャラップが53か国を対象に実施した調査によると、2011年に経済は悪化すると答えたフランス人は61%で、53か国平均の28%を大きく上回った。

 さらに67%が、2011年の失業率は増加すると答え、74%の英国、72%のパキスタンに次ぐ悲観度の高さとなった。

 2011年は前年よりも悪い年となると答えたフランス人は37%で、14%のアフガニスタン、12%のイラクよりも高かった。
 
 世論調査の結果をうけ、評論家のドミニク・モワシ(Dominique Moisi)氏はいう。「フランス人は恐れている。現在は過去よりも良くはない。未来はさらに悪くなる。子どもたちの世代は、より厳しい時代に直面するだろう、とね」

『Geopolitics of Emotion: How Cultures of Fear, Humiliation, and Hope are Reshaping the World(感情の地政学:恐怖、恥、希望にまつわる文化による世界の再形成)』(2009)の著者であるモワシ氏は、背景に病的な鬱(うつ)傾向があると指摘する。

■不況で中間層が悲観的に

 モワシ氏は、日常的に生命の危険があるアフガニスタンやイラクの人々よりフランス人の方が悲観的になっているというBVAギャラップの調査結果には懐疑的だが、ある程度はそのような現実もあると考えている。モワシ氏ら何人かの評論家が複数の要因を挙げている。

 フランスは社会保障が比較的、充実した国だったが、経済危機により国民が国に頼るのは難しくなっている。そこで、フランス国民は国に対し「反抗する一方で、より大きな保護を要求する」という「親に対する10代の子どものような」態度を取っているとモワシ氏は分析する。

 実はフランス人が悲観的だという事実は目新しいものではない。フランスの抗うつ剤の消費量は欧州で最も多い。

 失業率の上昇が彼らの悲観的傾向に拍車をかけている。その上ニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)大統領が推し進める年金の支給開始年齢を2018年までに現行の60歳から62歳に引き上げる法案が議会を通過したことから、フランス全土で抗議運動が巻き起こった。

「フランス人は、精神的に疲れきっている」と語るフランス政府のオンブズマンを務めるジャンポール・デレボワイエ(Jean-Paul Delevoye)氏は語る。政府に対する市民の苦情調査の任に当たる同氏は、悲観的になっているのは主に中間層だとみている。仕事が不安定となるなかで、生活の質が低下していくと恐れているからだ。

「フランス人は元来、快楽好きな国民だ。今、社会が沈滞し、ささやかな個人的喜びが失われつつある」(デレボワイエ氏)

(c)AFP/Anne-Laure Mondesert