「パンチ・ミー・パンダ」、街の怒りを引き受けるアーティスト
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【12月26日 AFP】パフォーマンス・アーティストのネイト・ヒル(Nate Hill)さん(33)は毎週、パンダの着ぐるみを着て街に出る。道行く人に殴られるためだ。 ある日の午後。人通りの多いユニオンスクエア(Union Square)でヒルさんは「僕を殴れ!もっと強く!きょうも何かに怒ってるんだろ?」と通行人を挑発し、ボクサーのように飛び跳ねる。多くの人はこの光景に目を丸くし、何かの広告だと誤解する人もいる。誰かを殴るなんてとんでもないと言いたそうな人もいるが、ただ単に怒っていないだけかもしれない。 そのうちにパンダを殴る人が出始めた。ある女性は上品なジャブを放った。ある若い男性はすばやいワン・ツーパンチをお見舞いした。男性数人のグループは仲間内で互いにはやしたてながら、決して反抗しないパンダにパンチやキックを見舞った。パンダを殴り終えて立ち去るときには、どの顔も輝いていた。 胸の部分には防具とクッションが入っていて、殴られると痛みは感じるものの、けがをすることはない。着ぐるみを脱いだヒルさんは、めがねをかけた物静かな語り口の男性だ。普段は実験に使うミバエの世話をする仕事をしている。 「みんな何かに怒っていて、何かを殴りたいんです。私もそうだから分かります。少しでも楽になってほしいんです」とヒルさん。パンダの姿で大通りを巡回し、レイオフが近い会社を訪問する。これまでに7~8回、ツイッターで寄せられたリクエストに応える形で、一般の家庭に行ったことさえある。黒いテディ・ベアや、包帯を巻いた透明人間のように全身白づくめの姿で同様のパフォーマンスをしていたこともある。 パフォーマンスを終えてパンダの頭を脇に置いたヒルさんは、「街にある苦しみを減らしたいんです。自分の中の苦しみに向き合うアーティストはたくさんいますが、ぼくはなるべく自己中心的にならないようにしたいんです」と語った。 このプロジェクト「パンチ・ミー・パンダ(Punch Me Panda)」はあと5か月続く予定だ。詳しくは下のサイトで知ることができる。(c)AFP/Sebastian Smith 【動画】ニューヨークに出現する「パンチ・ミー・パンダ」(YouTube/AFPBB News公式チャンネル) 【参考】ネイト・ヒルさんのサイト(英語)