【11月15日 AFP】約3年前、パリ(Paris)のバーやクラブが全面禁煙となったとき、こんな副作用が起こるとは誰も予想だにしなかった――タバコを吸いたいパーティー好きのパリっ子たちが路上にあふれ、彼らのおしゃべりで近隣住民の安眠が妨げられるようになるなどとは。

 それ以前から、パリ市内の人気地区に暮らす住民らは、お祭り騒ぎを楽しむ人びとの騒音に不平の声を上げていた。しかし対立が決定的になったのは、2008年1月1日にナイトスポットを含む公共スペースを全面禁煙とする条例が施行されたころからだ。

■住宅地に隣接、閉鎖に追い込まれるクラブも・・・

 09年には、バー店主を相手取った訴訟が多数起こされ、騒々しいクラブを市当局が閉鎖させる措置まで取られた。DJやクラブ経営者たちは、「光の都パリ」のナイトライフが死に絶えつつあると警告する嘆願運動を始めた。それ以降、双方の対立がくすぶった状態が続いている。

 こうした中、パリ市当局は12日、当事者たちを交渉の席に着かせようと市庁舎で会議を開催。クラブ経営者や警察、住民団体、地元当局などが一堂に会し、顔をつきあわせて2日にわたって議論した。

「パリは矛盾だらけの都市だ。市民はみな早起きだし、夜更かしもする。われわれはみな働いており睡眠も必要だが、ときにはパーティーもしたいのだ」とベルトラン・ドラノエ(Bertrand Delanoe)市長は会議で語った。

 ロンドン(London)など人気クラブやバーが商業地区に集まり、住宅の大半は郊外にある都市と異なり、パリは都心に暮らす住民が多く、人口密度の高い1つの場所を全員で共有している状態だ。市内の夜間勤務人口は60万人にも上り、そのうち23万人は深夜以降も勤務するが、そのすぐそばでは220万人が眠りについている。

 ドラノエ市長も、活気のあるナイトライフの振興と、住民の安眠確保の両立は難問だと認めている。

■和解に向けた方策は?

 野党の右派勢力にとっての問題解決策は、パーティー専用地区を作ることだ。候補地として、もともと工業地帯だったバティニョル(Batignolles)地区が挙げられている。

 一方、ドラノエ市長率いる左派勢力は、「労働と遊びの混在」という考えに固執する。活気のある路上こそが市内の夜を平和にする、というのが主論で、「パーティーと文化はパリの輝きの一部だ」と市長は主張する。

 来年の春から市は、警察官の代わりに赤鼻のマイム演者や道化師たちを問題地域に派遣して、騒音を控えるよう呼びかけるという新方策を始める。スペインのバルセロナ(Barcelona)で成功を納めたやり方をもとに考案されたものだという。

 また会議では、夜間にDJ付きのパーティーを開くバーの防音対策に補助金を拠出する案も出された。ただ、これには1施設につき2万~15万ユーロ(約230万~1700万円)の費用がかかる見込みだという。(c)AFP/Emma Charlton