【10月5日 AFP】ジョナス(12)は、何個も重ねたジャムの缶のてっぺんに絶妙なバランスで座り、両足を首に回す。助手のリチャード(11)が、「『夜の終わり』というポーズです」と説明し、目を丸くしている見物人たちの間を回ってチップのコインを回収する。

 地面に降りたジョナスは、今度はジャンプして片足を素早く首にからませる。「これは『使用していない時の銃』のポーズです」

 ここはコンゴ民主共和国(旧ザイール)の首都キンシャサ(Kinshasa)にあるうらぶれた通りの1つ。人口1000万人の首都の雑踏の中で曲芸を披露する子どもたちはジョナスらを含めて10グループほどいるとされる。この「曲芸師」たちは、体を奇妙に曲げたりひねったりする芸当で、自分自身と家族を養っている。

■「曲芸」で自分の学費も稼ぐ

 ジョナスとリチャードは、週に数日は放課後に道具を抱えて街に繰り出す。屋外レストランや娯楽施設など、金払いのよい見物客が集まりそうな場所を探す。

「乗っている車や服装、表情で、良い客かを見分ける。そういう客が大勢いる場所で曲芸をするんだ」と、はだしのジョナスは話す。身につけているのは、ズボンだけだ。

「100ドルくれたおじさんもいるよ」とリチャード。

 稼ぎが無い日が何日も続くこともあれば、1日に10~15ドル(約800~1300円)稼ぐこともある。平均すると月に約300ドル(約2万5000円)は稼ぐ。キンシャサの公務員の平均月収が(きちんと支払われればの話だが)50ドル(約4200円)であることを考えると、かなりの額だ。

 あるNGOの推計によると、ストリートチルドレンは全土で4万~5万人、キンシャサだけで1万5000~2万人いる。家計を助けるために道端で物ごいする子どもたちが数千人いる一方で、「曲芸師」たちは、潤沢な稼ぎを家計に入れ、自分の学費も賄っている。

■ヨーロッパ進出も夢じゃない?

 リチャードは将来のことも考えている。「兄さんが、身を立てるすべだと言って僕に曲芸を教えてくれた。3年間、道端で曲芸をやってきたけど、もしかしたらヨーロッパに進出できるかもしれない」

「曲芸師」たちは、正式なトレーニングを受けたことが一度もない。そもそも、民族闘争、戦争、腐敗、人道危機、財政難の連続だったこの国には、体育館といった代物が1つもない。

 だが、コンゴ体育連盟の幹部であるギュイ・ンキタ(Guy Nkita)氏は、彼らが「トップレベルのアスリート」であると認めている。「サーカスでも十分通用します」とンキタ氏は語った。(c)AFP/Lydie Betyna