【7月20日 AFP】2010年サッカーW杯南アフリカ大会(2010 World Cup)のドイツ代表チームは、23人の登録選手中11人が移民系という多様性が功を奏し、3位という好成績を収めた。

 だが、ドイツの労働市場で活躍を望む移民系ドイツ人たちには厳しい環境が続いている。多くの国では企業が求職者に配偶者の有無や誕生日、国籍などの個人情報を求めるのはタブーとされているが、ドイツでは求職者がこれらの情報に加え、自分の写真まで添えて求人に応募するのが一般的だ。

■多い移民系、根強い採用時の偏見

 最新の統計によると、ドイツの人口の約20%は移民系が占めている。ドイツで最大の少数民族はトルコ系で、約300万人が暮らしている。その多くが、いわゆる「ガスト・アルバイター」として1960~1970年代にトルコからやってきた外国人労働者の子どもたちだ。

 ドイツ連邦非差別局(German Anti-Discrimination Agency)のクリスティン・リューデルス(Christine Lueders)局長は、トルコ系の求職者が面接までたどりつく割合はほかの人たちより14%も低いと指摘する。

 ボン(Bonn)の民間調査機関、労働力研究所(Institute for the Study of Labour)が2010年に実施した調査によると、この傾向は特に中小企業で強い。従業員が50人未満の企業では「ファティーフ」や「セルカン」などトルコ系の名前よりも「デニス」や「トビアス」といったドイツ系の名前の人に積極的な対応をするという回答は24%に上った。 

■氏名を隠して履歴書を審査

 そこでドイツ連邦非差別局が企業に呼びかけ、氏名を隠して履歴書を審査する試みが2011年秋までの1年間にわたって試験的に行われることになった。家庭用品大手プロクター・アンド・ギャンブル(Procter and GambleP&G)や化粧品大手ロレアル(L'Oreal)など大手企業5社が自主的に参加する。

 リューデルス局長は、無意識な差別意識に採用活動が影響を受けることで、実は大きな犠牲を払っていることを企業に気づいてほしいと語る。

 新たな試みの恩恵をうけるのは移民系の人びとだけではない。障害のある人や、幼い子どもがいる女性の求職者にとってもこの試みは有利になるはずだとリューデルス局長は話す。すでにフランス、スイス、オランダ、スウェーデンでなどでは、同様の試みが行われているという。(c)AFP/Anne Padieu