【7月4日 AFP】(一部訂正)南アフリカ聖公会大主教で、反アパルトヘイト運動の立役者としてノーベル平和賞を受賞したデズモンド・ツツ(Desmond Tutu)氏は、今回のサッカーW杯の招致活動時、国際サッカー連盟(FIFA)の上層部に「南アフリカに開催権を与えてくれれば、天国行きのファーストクラス・チケットを約束する」と申し出ていた――28日、同国の大会組織委員会トップが、招致活動から開催までを回想した。
 
 2010年サッカーW杯南アフリカ大会(2010 World Cup)大会国内組織委員会(LOC)のダニー・ジョーダン(Danny Jordaan)委員長が、米CNNテレビの番組「グローバル・フォーラム(Global Forum)」に、開催国の招致から選考過程にあったできごとを振り返った。

 これによると、ツツ大主教は「わいろが一切絡まなければ、南アフリカの開催地立候補を支持する」と宣言していた。

 そこでFIFA上層部と南アの委員会関係者、ツツ氏の3者で初の会合をもったところ、ツツ氏はその席上でFIFA幹部に対し、「わが国に投票してくれれば、あなたは必ず天国へのファーストクラス・チケットを手にできるでしょう」と述べた。

 その場では黙っていたジョーダン氏は会合を後にすると、ツツ氏に「大主教、あなたはわいろはダメだとおっしゃっていたのではないですか?今お話されたのはわいろではないのですか?」と問い詰めた。するとツツ氏は「そんなことはない。わいろというのは人が生きている間に贈るもの。天国へのファーストクラス・チケットは、まずは死んでからでないと手にできない。だから、わいろではない」と堂々と否定した。

■布石となったラグビーW杯、アフリカ・ネイションズカップ開催

 またジョーダン氏は、2004年に初めて実現したサッカーのアフリカ大陸選手権、アフリカ・ネイションズカップ(African Nations Cup)に支持を取り付けるため、世界を駆け回っていたネルソン・マンデラ(Nelson Mandela)初代南アフリカ大統領の功績も大きいと敬意を表した。

「これらの行事のあちらこちらに、マディバ(マンデラ氏の愛称)の手の痕や指紋が残っている」。ジョーダン氏はサッカーからさらに広げ、人種の垣根を国内を越えて団結させる力となったとして、1995年に同国で行われたラグビー・ワールドカップ(Rugby World Cup)にも言及した。

 6年前、スイスのチューリヒ(Zurich)のFIFA本部で行われた開催国発表の際、マンデラ氏とツツ氏もその場に出席していた。「彼にとってもツツ氏にとっても、感動いっぱいの瞬間だった。マンデラ氏が涙を流し、それをツツ氏がハンカチでふく写真が残っている」

「この2人の偉大な人物がわれわれと一緒に(W杯招致のために)、世界中を渡り歩いてくれたことは筆舌に尽くしがたい」といよいよ迎えるW杯の最高潮を前に、ジョーダン氏は感慨にひたった。(c)AFP