【6月30日 AFP】先史時代の人間も、原始的な形態の「映画」を楽しんでいた――。英ケンブリッジ大学(Cambridge University)とオーストリアのザンクト・ペルテン大学(Sankt Poelten University)の研究チームが29日、明らかにした。研究チームは現在、この古代の「映画」の復元に取り組んでいるという。

 欧州全域では、銅器時代の壁画が発見されているが、ケンブリッジ大のフレデリック・ベイカー(Frederick Baker)氏によると、これは単なる絵ではなく、「視聴覚的パフォーマンス」の一部だったという。

 ベイカー氏は、「もちろん動画ではないが、アニメーションのような流れとなっている。また、エコーがかかるような場所から発見されていることから、視覚だけでなく聴覚でも楽しめるようになっていた」と説明する。「この意味では、壁画は単なる静止画ではなく、見る人の心の中で、まるで映画のようにストーリーが膨らんでいくものだったといえる」

 両大学は現在、独ワイマール・バウハウス大学(Weimar Bauhaus University)と協力して、「プレヒストリック・ピクチャー・プロジェクト(Prehistoric Picture Project)」を立ち上げ、コンピューター技術を駆使して、古代の「映画」の復元に取り組んでいる。

 これらの「映画」は、紀元前4000年~紀元前1000年のもので、戦いやダンス、狩猟の様子を描いている。興味深いことに、死については全く触れられておらず、女性についてもほとんど描かれていない。

 プロジェクトは、発見された壁画が約10万個と世界最多の部類に入るイタリア北部ロンバルディア(Lombardy)地方のバルカモニカ(Valcamonica)で進められている。(c)AFP