【6月24日 AFP】ファビアン・モリッツ(Fabian Moritz)君(19)は、普通のドイツサッカーファンとは違う。2010年サッカーW杯南アフリカ大会(World Cup)で得点数が少なくても気にしないし、イングランド代表の善戦も願っているほどだ。

 学校の卒業試験に落ちたばかりのモリッツ君だが、彼がレゴブロックで再現したW杯試合の動画がネット上で一大センセーションを巻き起こしている。

「1ゴール分作るのに2~3時間かかります」。モーリッツ君は、両親と住むドイツ北部ラーツェン(Laatzen)の家の小さなホビールームで話してくれた。この部屋で作業をしているモリッツ君は、午前3時まで夜ふかしして最新作を製作していたというのにさわやかである。

「今回のW杯は、いまのところ試合のクオリティに腹が立ちますね。見るのがつらいですよ。動画を作るのにはいいんですけどね。4-3の試合だと1日以上かかってしまいますから」(モリッツ君)

■34万回アクセスの大ヒット、英・独紙と契約

 モリッツ君が制作した動画がとても良かったため、モーリッツ君は英紙ガーディアン(Guardian)や独紙ビルト(Bild)と、イングランド代表とドイツ代表の全試合の動画を制作する契約を結んだ。

「自分のホームページに34万回のアクセスがあった日もあります。クレージーですよ。オランダやデンマーク、日本、フランス、スイス、イングランドなどいろんなところから問い合わせもきます」

 イングランド代表のゴールキーパー、ロバート・グリーン(Robert Green)の痛恨のミスで米国と1-1で引き分けたイングランド代表戦のレゴ動画は、閲覧回数が130万回を数えた。ネットの基準からすると脅威的な数字だ。

■オフサイドラインも表示、人形倒れる苦労も

 モリッツ君は非常に時間のかかる「ストップモーション」技術を使って、3年前から地元のサッカークラブ、ハノーバー96(Hannover 96)の試合のレゴ動画を作り始めた。

 1コマごとにレゴブロックを手で移動して動画の1コマ1コマを撮る。1ゴールにつき80コマ必要だ。それからボールがあたかも飛んでいるような「特別な仕掛け」を使ってモリッツ君のいう「おんぼろ」パソコンで動画を制作する。テレビで放送された本物の解説も動画に加える。

 ディテールへのこだわりは驚くほどで、レゴ人形は選手に似ているし、ゴールが決まれば観客が飛び上がって喜び、オフサイド判定の際に出る赤いラインまで映像に重ねて表示される。ブブゼラをもったサポーターさえもいる。
 
 モリッツ君は「好きな人形は(フランス代表のミッドフィルダー)フランク・リベリ(Franck Ribery)」と、リベリにそっくりな青いシャツ姿のレゴ人形を誇らしげに見せてくれた。レゴのパイレーツシリーズからもってきたようだ。

 イングランド代表のストライカー、ウェイン・ルーニー(Wayne Rooney)の人形も本人にそっくりで、レゴのハリー・ポッター(Harry Potter)シリーズからもってきたかつらをかぶせたドイツのヨアヒム・レーブ(Joachim Loew)代表監督の人形も監督とうり二つ。モリッツ君はレゴ人形を数百個持っているという。30年以上前の古い人形もある。
 
「本当にイヤになるのは、人形が倒れること。前にあった場所に正確に戻さなければならないんです。ゴールキーパーはしょっちゅう倒れるし」(モーリッツ君)
 
 毎日3試合行われる試合の中から、一番面白かった試合を選んでいるが、イングランド代表の動画を全部制作するという契約があるため、妥協しなければならないのだという。

「0-0の試合(イングランド対アルジェリア)は、何を撮ればいいのかと聞いてしまいましたよ。ひどくつまらなかった」と不満をもらす。

「ガーディアンの人から、ファンが怒っている様子、ルーニーがやじられている場面、おかしな歌などを動画にするように言われたので、何かしらつなぎ合わせてなんとか作りました。レゴ人形のかつらはたくさんもってないのですが、イングランドのサッカーファンはたいてい髪の量が多くないので大丈夫でした」

 モリッツ君のウエブサイトには、1966年にイングランドが西ドイツに勝った試合のレゴ動画も。「彼らはすべて終わったと思っているでしょう(they think it's all over)」という本物の有名な解説コメントを入れ、モノクロ画面で掲載されている。

 もっともモリッツ君はイングランド代表に早く敗退してほしいと願っているわけではない。「イングランドが敗退したら、お金を逃してしまう」からだ。(c)AFP/Simon Sturdee

【参考】モリッツ君が作ったレゴ動画を見られるサイト