【6月16日 AFP】中国・北京(Beijing)郊外にある八達嶺(Badaling)野生動物公園。ここを訪れた客は4ドル(約370円)相当の代金を払えば、ライオンに向かって餌用の生きたニワトリを投げ込むことができ、同動物公園の売り物となっている。

 観光客の1人は、ライオンの囲いを見下ろしながら、この餌やりについて「やっぱり怖かった」と話した。だが脇にいた友人は「だけどワクワクしたし面白かった」と楽しそうに語った。

 60ドル(約5500円)を支払えば、ヤギを投げ入れることも可能だ。

 こうした生きた餌やりサービスは中国各地の動物園で行われているが、倫理的には疑問符がつく行為であることは否めず、中国政府も同国初となる動物保護法の制定に向けて動き出してはいる。

「中国の動物園や水族館の大半で、動物たちは深刻な状況におかれている」と、米国を拠点とする動物保護団体「Humane Society International」の中国担当、ピーター・リー(Peter Li)氏はいう。

■劣悪な環境に置かれる動物たち

 中国では近年、動物園などが飼育する動物たちの劣悪な環境をめぐるスキャンダルが耐えない。

 2~3か月ほど前には、北東部遼寧(Liaoning)省の経営に行き詰った動物園で、絶滅の危機にあるアムールトラ11頭が鶏の骨しか与えられずに餓死するという事件があった。 

 また黒竜江(Heilongjiang)省の動物園でも3月、ライオン、トラ、ヒョウなどの死がいが大量に埋められた「集団墓地」が見つかった。動物たちの死因は病気や栄養失調とみられている。

 中国の動物園の動物たちについて、英国の王立動物虐待防止協会(Royal Society for the Prevention of Cruelty to AnimalsRSPCA)のポール・リトルフェア(Paul Littlefair)氏は、「多くが栄養失調状態にあり徐々に衰弱しているが、獣医のサポートはほとんどない」と危惧(きぐ)する。

■大都市の動物園では改善

 一方、北京や上海(Shanghai)などでは、この10年間、ゾウの囲いを広げたり、カワウソの囲いに滝をつくって自然に近い状態をつくりだすなど、動物たちの環境改善に取り組む動物園も増えているという。

 だが、リトルフェア氏は、ほとんどの動物園がまだ十分ではないと考えている。

 問題の一因は、こうした動物園が私有であることだと、中国動物園協会(Chinese Association of Zoological GardensCAZG)の謝鐘(Xie Zhong)副事務局長はみている。謝氏は「動物園は公益を目的とした施設であるべき」と考えており、動物園を政府の管理下に置くことを重ねて訴えてきたという。

 また動物専門家らも、人間の飼育下にある動物の扱いに関する法整備の必要性を一様に口にしている。

 こうした声をうけ、生きた動物を餌とすることを禁止する条項や、資金不足で動物の飼育状態が悪化した際に報告を怠った場合の罰則などを盛り込んだ動物保護法案の審議が進行中だ。だが、可決されても施行されるのは数年先となる。(c)AFP/Marianne Barriaux