【6月3日 AFP】「バファナ・バファナ(南アフリカサッカー代表の愛称)」のジャージを着て、南ア国旗の色をしたかつらと大きな黄色のメガネを身につけたジョシア・モツワレディ(Josiah Motswaledi)さん(29)は、トランペットのような民族楽器「ブブゼラ」を吹きながらヨハネスブルク(Johannesburg)のサッカー・シティ・スタジアム(Soccer City Studium)に現れた。

■W杯気分に盛り上がる南ア

 11日に開幕する2010年サッカーW杯南アフリカ大会(2010 World Cup)が近づくにつれ、南アフリカの街中にモツワレディさんのような熱狂的なサッカーファンが増えている。

 モツワレディさんは5月22日に開催された同スタジアム初の試合を観戦するため、サッカー・シティ・スタジアムにやってきた。このスタジアムではW杯の開幕戦と決勝戦が行われる。「すごいな。ここに来られて光栄だ。わくわくするね」

 ヨハネスブルクやケープタウン(Cape Town)、ダーバン(Durban)といった主要都市では、着飾った露天商たちが、さまざまな大きさをしたW杯参加国の国旗を売り歩いている。車のサイドミラーにパチっと止める弾力性のあるタイプが人気だ。

 南ア政府は高速道路沿いに国旗を張り巡らせ、バーやレストラン、ガソリンスタンド、金物屋も店に国旗を下げている。

 サッカージャージを着る人が週末ごとに増え続け、歩道は南ア代表を応援する緑と黄色であふれる。

 観戦チケットが海外で予想よりも売れず、国際サッカー連盟(FIFA)が南アフリカにまわすチケットを増やしたため、サッカー・シティ・スタジアムの観客席の6割は地元の人で埋まる見込みだ。

■地元料理食べられない?
 
 しかし、FIFAの規制のせいで、W杯から「アフリカらしさ」(あるいは、少なくとも南アでは歓迎される流儀)が減らされそうだ。

 南アフリカのサッカーの試合にはニワトリの足や羊の頭、ソーセージ、シチューといった食べ物を売る露天商がつきものだ。エアホーンより大きな音を出すプラスチック製の長いトランペット「ブブゼラ」が鳴り響くスタジアムで、サッカーファンたちはペットボトル飲料を回し飲みしながら即席の祝祭を盛り上げる。
 
 今回のW杯はずっと衛生的なものになるだろう。FIFAはスタジアムから800メートル圏内と公式ファンパークではFIFAの商業パートナーの営業しか認めていないからだ。つまり、大通りではおそらく、ファストフードやソフトドリンク、世界的に有名なビールが出されるということだ。
 
 5月22日に行われたスタジアム初の試合はFIFAの規制に従って運営され、スタジアムの外であてどもなく食べ物を探し求めるお腹を空かせたサッカーファンや、警備員に会場内への持ち込みを止められた飲み物をスタジアムの外で飲み干す観客の姿が見られた。

 ヨハネスブルクのエリス・パーク・スタジアム(Ellis Park Stadium)の外で14年前から商売をしているという露天商は、サッカーファンが地元の味を逃してしまうのが心配だと話す。

「南アフリカならではの体験なんですけどね。羊の頭がどうやって出されるのかまったく知らないような外国のサッカーファンに、ぜひ味わってほしかったんですが」

■FIFA、南アに譲歩

 FIFAは、欧州の一部の選手や放送局の抗議を退け、ブブゼラを許可することを決めた。また地元関係者によるとチケットをもたない人々が巨大なTV画面で観戦できるファンパークに露天商が営業できる場所が設けられる見通しだ。

 地元ミュージシャンの苦情を受けて、FIFAは10日の開幕コンサートにシャキーラ(Shakira)やブラック・アイド・ピーズ(Black Eyed Peas)とともに南アのミュージシャンも出演させることを決めた。観戦チケットも当初はウェブサイトか一部の銀行の支店でしか販売していなかったため南ア国内の売れ行きは振るわなかったが、前月になってFIFAがチケット販売店を開くと、観戦チケットを求める人々が長蛇の列を作った。

「なんにせよ2010年はやってきたんだ。俺たちは準備万端さ」(モツワレディさん)

(c)AFP/Joshua Howat Berger