【5月26日 AFP】米ロサンゼルス(Los Angeles)を訪れた観光客に人気のツアーといえば、ハリウッドの有名スターたちの邸宅が建ち並ぶ高級住宅街をバスで巡るといったものだ。だが、アルフレッド・ロマス(Alfred Lomas)さんのツアーが連れて行ってくれるのは、LAギャングが過去や現在も勢力をふるう地域だ。

 「The Ultimate Urban Experience(究極の都会体験)」と題された月に2度開催のこのツアーは、これまで数多くの映画で描かれながら、めったに見る機会のないLAギャングの世界の深層をのぞこうというもの。参加費は1人65ドル(約5800円)。約15人のグループで、ロサンゼルスでも最も危ない地域とされる暗黒街の一部を回る。

 ツアー誕生のきっかけは、キリスト教会が支援する慈善団体「ドリーム・センター(Dream Center)」にロマスさんが関わったことだった。「ドリーム・センター」はロサンゼルスの極貧地域の人びとに食料や衣服などを提供する活動を行っている。

 ロマスさん自身も、以前、ギャング団に所属していたが、その後、更正した人物だ。ツアーによる収益の一部は、貧困地域が持続可能な変化をとげるための資金として還元する。

 ロマスさんによれば、ツアーを企画した目的は「怖いものみたさ」よりも、貧困地区の実態を知ってもらうことにあるという。「ツアー参加者が実際に貧困地域を訪れることで、ロサンゼルス南部のギャング抗争に関する悪いイメージを破るきっかけになると感じている」と語るロマスさんは、ツアーに参加した人びとが、ロサンゼルスの貧困地区に抱いていた先入観を払拭できればと願っている。

 このほか、ロマスさんのツアーではロサンゼルス郡刑務所や著名ギャング団クリップス(Crips)誕生の地、新聞王の娘パトリシア・ハースト(Patricia Hearst)誘拐で知られる米左翼過激派組織シンビオニーズ解放軍(Symbionese Liberation ArmySLA)と警察との銃撃戦現場などを訪れる。(c)AFP/Romain Raynaldy