【5月13日 AFP】「刀」と言えば昔は侍が敵を切りつけるものだったが、現代ではぜい肉やストレスを「成敗」する「刀エクササイズ」なるものに使われている。

「右足を出して、まっすぐに切り下ろす。胸を押し出して、背中を曲げずに切ります」。都内にある刀エクササイズ教室で指導するのはたかふじ右近(Takafuji Ukon)さん(31)。日本舞踊や剣舞の経験を持つエクササイズプロデューサー兼コレオグラファー(振付師)だ。

「これで余分な脂肪を成敗!」――右近さんのかけ声に合わせ、スタジオでは女性たちが汗だくになりながら刀を振り下ろす。 「胴切り、まっこう切り、ななめの袈裟切り、逆袈裟切りの4つの基本の型を覚えてもらい、その後コンビネーションに入っていきます」と右近さんの説明は続く。

 もちろん使っている刀は木とウレタンで作られたレプリカだが、エクササイズ参加者の決意は「1か月で5キロの減量」と「鋼」のようにかたい。

 刀エクササイズがこれほどの人気を博していることに、右近さん自身も驚きをかくさない。「刀イコール男性、扇イコール女性を思ってたんですが、そんなことはなかった」。1時間2000円のクラスには100人以上の女性が登録している。

 右近さんが学んだ剣舞のルーツは数世紀前、侍が死者を弔った際の鎮魂の舞いにさかのぼるとされる。また右近さんの母親は日本舞踊の師範だ。

 教室を始めたきっかけについて右近さんは「日本の伝統芸能とエクササイズを組み合わせて幅広い人に楽しんでもらい、ダイエットもできるものができればいいと思いました」と語る。女性に人気が広がった理由は「自分が今まで絶対なれないと思っていたものになりきれる、鏡を見て刀をもった人物になった自分に陶酔してなりきるところが夢中になった理由だと思います」

 侍は禁欲的で非情なものととらえられているかもしれないが、右近さんの教えはもっとニューエイジ的だ。「今は時代的に人を切るということじゃないので、おのれの中の負の部分を切っていく」と、自分の中にある「脂肪」や「負の感情」、「衝動」などを敵に見立てるようにとアドバイスする。

 ある参加者(20)は「汗出たし、腰とかすごいひねれて、刀って楽しいです」と刀エクササイズの魅力を語る。

 エアロビクスに挫折したことがあるという別の参加者(40)は「まず刀を持つのがすごくオリジナルで、日本文化に少し触れる機会があるのでそれも楽しい。刀を振って切ることで気分も爽快になる。侍とか時代劇の主人公になった気分で、悪を切る気持ちでできます」と言う。

 別の参加者(33)は、真剣を使った合戦に置き換えたら、1回の教室で1000人以上を切っていることになる、と語った。(c)AFP/Miwa Suzuki