【4月28日 AFP】英国がインドにカレーを輸出する? こんなアイデアはばかげて見えるかもしれない。しかしある料理人たちのグループは、この伝統的インド料理の英国版レシピを本家本元インド大陸の人々に教えようと決心した。

 英国ではインド料理は食生活にすっかり定着し、たくさん食されている。しかし、カレーの本家インドで、欧州へ伝わった自国の料理について聞いたことのある人はほとんどいない。

 ヨーグルトをベースに、スパイスの効いた赤いソースで知られるチキンティッカマサラは、英国のレストランで最も人気のインド料理だといわれているが、インドではまったくその名は聞かれない。インドでは「カレー」という言葉さえ、英国で発明されたものだとみなされている。

 英国人にとってグレービー(肉汁)ソースは、伝統的に日曜日に食べるローストビーフに添えられるものだが、インド人にとっては「グレービーソース」でしかないインド料理でも英国人はそれをカレーと呼んできた。

■大英帝国時代の首都に英国カレーが里帰り

大英帝国の植民地時代に首都だったインド東部コルカタ(Kolkata、旧カルカッタ)で前週、英国風カレーを味わうカレー・フェスティバルが開催された。

 コルカタ市内で広く宣伝されたこのイベントは、英・インド両国が貿易や植民地支配を通じてつながって以来、300年の間に英国で発展したカレー料理をインド人に紹介しようとする企画だ。

 フェスティバルのディレクター、サイード・ビラール・アフメド(Syed Bilal Ahmed)さんは「英領インドは、コルカタから始まりました。英国人はこの歴史的な街で初めて、インドのカレーを食べたのです。この地にカレーを持ち帰るのは、里帰りするようなものです」と話す。

 フェスティバルでは英国を拠点にするインド人、バングラデシュ人の名シェフ4人によって、バルチ、ジャルフレジ、ティッカマサラなど英国のカレー料理店の定番メニュー50種が紹介された。

 英国料理にまずいという評価はもはや値しないと信じるアフメドさんは「英国版カレーのほうがスパイスや油分、甘味、塩気が少なく健康的です」と話す。

 フェスティバルは25日に終わったが、食通が多いコルカタに今後も長く印象を残すだろう。地元ホテル、ヒンドゥスタン・インターナショナル(Hindustan International)の料理長、ウトパル・モンダール(Utpal Mondal)さんは、フェスティバルが始まってから18パーセントも売上が伸びたという。「フェスティバルの後も英国カレーを出す予定です」

 コルカタ市民も英国版カレーを楽しんだようだ。ヒンドゥスタンのレストランを夫と初めて訪れたという会社員のスタパ・サンヤル(Sutapa Sanyal)さんは、「英国風カレーを食べようと思って来ました。とってもおいしいですね」と話した。
 
 この「The Taste of Britain's Curry Festival(英国カレー味わいフェスティバル)」は、バングラデシュやスペインでの開催も予定されている。(c)AFP/Sailendra Sail