「究極の山歩き」 最高峰ヒマラヤ横断ツアー、11年2月開催
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【4月26日 AFP】これぞ「究極の山歩き」――。そんな宣伝文句とともに2011年2月、踏破距離1700キロメートル、157日間に及ぶネパール・ヒマラヤ山脈横断トレッキングツアーが初開催される。主催するのは、ネパールのトレッキングツアーで30年以上の実績があるワールドエクスペディションズ(World Expeditions)社だ。
■「ネパール文化たどる古道」、10年かけ開拓
世界最高峰の山脈を徒歩横断できるルートは、英国人トレッカーのロビン・バウステッド(Robin Boustead)さんが10年間かけて開拓した。高まる期待の中、バウステッドさんがついにネパール国内のヒマラヤ山脈横断に成功したのは前年のこと。歩き始める前と比べて体重は20%も落ちたという。
AFPの取材に応じたバウステッドさんは、「長距離の山歩きルートがないのはアジア大陸だけだった。だから選んだんだ。それに、ヒマラヤ山脈の名前なら地球上に暮らす誰もが聞いたことがあるしね」と語った。「最初に思いついたのは1993年で、それからすっかりこのアイデアのとりこになってしまった。でも、ネパールが02年に中国との国境線を非武装化するまでは、実現の可能性はなかったよ」
中部ランタン(Langtang)のタマン(Tamang)人の仏教文化、ヒンズー教と古くからのアニミズム信仰が混ざり合った最西端地域――。中国・チベット(Tibet)自治区との国境沿いのカンチェンジュンガ(Kanchenjunga)から、貧しい西部のフムラ(Humla)まで続くルート上は、ネパール発祥の多様な文化の宝庫だ。
バウステッドさんが選んだ道はすべて、太古の交易路や、農民たちが家畜の移動に何百年も使ってきた古道など。道案内は地元のガイドに頼んだ。
■区間は7つ、標高6000メートルの場所も
来年2月にスタートするトレッキングツアーでは、バウステッドさんも一部で先導役を担う。ツアー参加費は3万1000ドル(約290万円)。全ルートを踏破するには157日間かかるが、ルートは7区間に分かれており、区間ごとの参加も可能だ。
ワールドエクスペディションズの英国支社によると、これまで全ルートの参加申し込みをしたのは1人だけ。ただ、区間単位の申し込みは何件か届いているという。客層はというと、トレッキングをする時間と資金に余裕のある40歳以上の玄人が中心だそうだ。「それなりに経験を積んでいる必要があります。初トレッキングには絶対に適さないでしょう」と同社マネージャー。
それもそのはず、一部区間は標高6000メートル以上の山道で、ピッケルや釣りかぎが必須。つまり、本格的な登山の技能が求められるのだ。
これらの区間の先導役としては、世界最高峰エベレスト(Everest、中国名チョモランマ、8848メートル)の無酸素登頂に英国人として初めて成功したスティーブン・ベナブルス(Stephen Venables)さんら、トップレベルの登山家たちが雇われた。
現地は観光開発の未踏地域であるため、ツアーのプロモーションには英国の国際開発省が300万ドル(約2億8000万円)を拠出する。
■ついに実現した夢のルート、将来は中国やアフガンへ
ヒマラヤ山脈を横断するというアイデア自体は目新しいものではない。1980年代のインド軍は、東部カンチェンジュンガ山からインドのラダック(Ladakh)地方までの行軍訓練をたびたび実施していた。
しかしその当時、ネパールのヒマラヤ山脈の大部分は外国人に開放されておらず、また96年にネパール共産党毛沢東主義派(Communist Party of Nepal Maoist)が武装闘争を開始すると、同国各地で外国人の訪問が禁止された。こうした事情から、06年に政府と毛派の間で包括和平協定が結ばれるまで、ヒマラヤ山脈横断のアイデアは実質的に実現不可能だった。
バウステッドさんは、いつか、中国からアフガニスタンまでヒマラヤ山脈すべてを徒歩横断できる日が来ることを夢見ている。現在はブータン国内とインド北東部アルナチャルプラデシュ(Arunachal Pradesh)州のルートを調査中で、来年にはパキスタンとアフガニスタンを訪問したいという。(c)AFP/Claire Cozens