【4月3日 AFP】バラク・オバマ(Barack Obama)大統領の肝いりで成立した米医療保険改革法だが、この改革に強烈に反対する米フロリダ(Florida)州の医師が、自分の意見が気に入らない患者は「よその医者に行って欲しい」と宣言している。

「診療を断っているわけではない。それは倫理に反する。けれど、うちのクリニックの貼り紙を見て、患者のほうが帰るならば別にかまわない」と泌尿器科医のジャック・カッセル(Jack Cassell)医師は地元紙オーランド・センチネル(Orlando Sentinel)に語った。

 カッセル医師のクリニックの扉に貼り出されたメッセージはストレートだ。「オバマに投票した人は、どこか別の泌尿器科を探してください。あなたの医療に今すぐ変化を。4年もかけるのではなく」

■「言論の自由」と「医師の義務」のせめぎ合い

 しかし、カッセル医師のやっていることは「言論の自由」と、医師としての義務の放棄との間のきわどい行為だと、フロリダ大学(University of Florida)のウィリアム・アレン(William Allen)教授(医療倫理)は指摘する。

 米国の法律では医師が人種、性別、宗教、性的指向、障害などを理由に患者の受け入れを拒否することは禁じられているが、政治的選好はこの中に含まれていない。

 カッセル医師は患者に政治的な考えを尋ねているわけではないし、投票行動に基づいて患者を追い返したこともないことから「倫理的義務の核心は手離してはいない」とアレン教授は言う。しかし「許容範囲ぎりぎりであることは確かだ」

 患者の政治的信条によって治療を変えることはない、とカッセル医師は誓う。しかし、オバマ大統領を支持する患者は診たくないという姿勢もまったく隠さない。「少なくとも、自分の意見を主張することはできるはずだ」とカッセル医師は話している。(c)AFP