【3月30日 AFP】セネガルで23日、アフリカ諸国の中では初めて、奴隷制と奴隷貿易を人道に対する罪であると宣言する法律が成立した。当事国に賠償金を求めるものではなく、「(悲惨な過去を)記憶にとどめておくための」法律だとしている。

 法務大臣のスポークスマンは、法律について、「記憶を義務付けるためのもの。歴史的な遠い過去の事実に対する司法の答えがこれだ。事の重大さ、恐怖、アフリカに及ぼした劇的な結果を知らしめるものでもある」と説明した。

 アブドゥラエ・ワッド(Abdoulaye Wade)大統領の次の談話も発表された。「(奴隷制を)赦し、(奴隷制の廃止を)祝うことは可能だが、(奴隷制の過去を)消し去ってはいけない。なぜなら、尊厳には無上の価値があるためだ」

 1600年代に活発に行われた大西洋奴隷貿易は当初、西アフリカのセネガンビア(Senegambia、現在のセネガルとガンビア)を中心に行われた。

 セネガルでは、アラブ系のベルベル人などがセネガル川(Senegal River)流域の集落で奴隷狩りを行い、捕らえられた奴隷たちは首都ダカール(Dakar)沖のゴレ島(Goree Island)から、船で積み出されていった。奴隷商人の館であった「奴隷の家(House of Slaves)」は、1978年に世界遺産に登録されている。

■4月27日を祝日に

 この法律はセネガルが独立50周年を迎える4月4日を前に成立した。

 法律は、1848年4月27日にフランスの植民地における奴隷貿易が廃止されたことを記念して、4月27日を祝日に定めた。さらに、学校、特に歴史の授業で、十分な時間を割いてこの問題を取り上げ、奴隷貿易がアフリカにもたらしたものについて子どもたちに理解させることも盛り込んだ。

 なお、アフリカ諸国は、奴隷制を人道に対する罪として宣言すべきという点では一致しているが、奴隷貿易の当事国への賠償金や謝罪の要求などについては足並みが揃っていない。

 米上院は前年、奴隷制に対する謝罪決議を全会一致で採択した。2006年、トニー・ブレア(Tony Blair)英首相(当時)は、奴隷貿易における大英帝国の役割について「深い悲しみを覚える」と述べたが、全面的な謝罪には至らなかった。(c)AFP/Christophe Parayre