【3月21日 AFP】スイス・バーゼル(Basel)で18日から開催中の世界最大の高級時計の見本市「バーゼルワールド(Baselworld)2010」で、メーカー各社は「ぜいたくの時代は過ぎ去った」と口をそろえる。今年の潮流は「ベーシック回帰」だ。  

 世界的な金融危機による低迷からの回復の兆しも見えるが、バーゼルワールドに参集したメーカー各社は慎重姿勢を崩さない。顧客のムードも危機前に見られた陶酔感からはほど遠い。

 「経済が回復し始めてから数か月、良い兆しもある」とバーゼルワールドの実行委員会を率いるジャック・ドゥシェンヌ (Jacques Duchene)氏は言う。高級時計ブランドのウブロ(Hublot)や大手スウォッチ(Swatch)は、2010年に入って現時点までの売上について「並外れて良い」と表現している。しかし、ドゥシェンヌ氏は「世界の景気はいまだ非常に不安定。楽観すべきではない」と釘を刺す。  

 スイスからフランス、ドイツ、イタリアまで欧州の主要時計輸出メーカー各社が発表した09年の業績は、そろって低調だった。世界全体の時計業界のバロメーターとされるスイスの輸出高は2009年、前年比で22.3%も減少した。  

 ドゥシェンヌ氏は、消費者は買い物に慎重になっており、その結果、一斉に「本物の価値や、伝統的で手堅い基本に回帰している」と分析する。「何を買うかについて、最近の顧客は以前よりも自分の責任を自覚し、考えぬいて決めている。名声ある本物の一流メーカーもそれに応えなければいけない。すでにいろいろなところで書かれたり、話されたりしているが、『ぜいたくの時代』は終わったのです」  

 世界最大のスイスの高級時計業界では1月、3000フラン(約25万5000円)未満の価格帯の輸出需要が大きく伸びた。  

 出展しているスイスメーカーの委員長を務めるフランソワ・ティエボー(Francois Thiebau)氏は、「真の価値とクラシックなデザインへの回帰だ」と語った。(c)AFP/Hui Min Neo