【3月16日 AFP】「金持ちなんて最低だ」という捨てぜりふさながらに「特権階級」の不正や悪事に関するニュースを集めたサイトが米国で人気を集めている。

「堕落した富豪」の意を込めて「バイル・プルートクラット(Vile Plutocrat)」と名付けられたこのウェブサイトには、やり玉にあがっている人物の経歴など関連情報の暴露から、編集部による痛烈な批判までがあふれている。

「このサイトがが生まれたきっかけは、(ナスダック・ストック・マーケット(Nasdaq Stock Market、現ナスダックOMXグループ)の)バーナード・マドフ(Bernard Madoff)元会長が起こした巨額詐欺事件です」。運営する米ジョージア(Georgia)州アトランタ(Atlanta)の小さなウェブ制作会社「シックスティーン・トーズ・デザイン(16 Toads Design)」のポール・バートン(Paul Burton)氏はAFPの取材に語った。「ひと言で言えば、わたしたちが探しているニュースは、社会の上層に属し、中産階級から金を奪い取っている人物に関するものなら何でもです」

 米金融の中心ウォール街に君臨したマドフ元会長は、「ポンジ・スキーム(Ponzi scheme)」とよばれる「ネズミ講」まがいの手口を使った巨額詐欺で逮捕され、09年に禁固150年の判決を受けて受刑中だ。

 バートン氏によるとマドフ事件の後、同じような特権的地位にいる人びとによるネズミ講的詐欺など、信頼や権力を悪用した事件のニュースが「津波」のように現れた。

 しかし最初は一面で大々的に報じられていたニュースが、徐々に紙面の内側に寄せられ、最後は完全に消えてしまうのを何度も目にした。特権階級のスキャンダルは短命に終わるというのがお決まりになっていると思えた。「何が本当に起こっているのか、誰がその背後にいるのかが、世間の人びとの目から巧みに隠されていた。そこで、そうした不正や悪事に関するニュースを、その裏にいる個人と結びつけて報道し、人びとの判断に任せるサイトにしたんだ。これは本物のニュースサイトだ。でっちあげの話はいっさいないよ。すべて現実だ」

「非常に政治的」な人間だと自認するバートン氏は、このサイトに多少の偏りがあることは認める。14日の日曜版のトップには、わいろの豪華旅行を楽しんだ米議員の問題や、米国の銀行がギリシャの金融危機に及ぼした影響などが並んでいた。創設以来、週1回の発行で約2000人の定期購読者がいる。

「プルートクラット」は14日、テキサス(Texas)州オースティン(Austin)で開催中のメディアの祭典『サウス・バイ・サウスウェスト(South By South WestSXSW)において、毎年新たに立ち上がったサイトやサービスに贈られる「ウェブ・アワード(Web Awards)」ブログ部門で、「出版の力に革命をもたらした」として最優秀賞に輝いた。(c)AFP/Glenn Chapman

【参考】「バイル・プルートクラット」のウェブサイト(英語)