【3月9日 AFP】隣国ミャンマーから流入してバングラデシュ国内にとどまっているミャンマーのイスラム教少数民族ロヒンギャ(Rohingya)の難民に対し、バングラデシュ政府が弾圧キャンペーンを展開しているとの報告書を、米団体「人権のための医師団(Physicians for Human Rights)」が9日に発表した。

 これによると、バングラデシュ政府はロヒンギャの難民に食糧が行き渡らないようにしているほか、恣意(しい)的な逮捕、法律によらない国外追放、強制収容所への抑留などを行っている。

 これまでに、難民登録をせずにバングラデシュに住んでいるロヒンギャ難民数万人が、仮設の収容所に強制収容された。中には数十年間、バングラデシュで暮らしてきた難民もいる。収容所の中で彼らは放置され、餓死者も出ているという。

「人道のための医師団」で調査ディレクターを務めるリチャード・ソロム(Richard Sollom)氏は「この弱者の集団に住む国を与えぬまま放置し、飢えたままにしておくのは、とうてい受け入れられない」と憤っている。ソロム氏によると、最近のハイチ大地震後の子どもの栄養失調率は6%だったが、ロヒンギャの収容所にいる子どもではその3倍の18.2%にも上っているが、なんの援助もないという。

 国連(UN)が世界で最も迫害されている少数民族のひとつとみなしているロヒンギャは、ミャンマー北部のラカイン(Rakhine)州から毎年数千人単位で国境を越え、イスラム教徒が多数を占めるバングラデシュに流入している。

 バングラデシュで難民として登録されたのは2万8000人で、クトゥパロン(Kutupalong)の難民キャンプに収容されているが、バングラデシュ政府はこれは氷山の一角で、未登録の難民は20~30万人いるものと推計している。同政府の弾圧強化について「人道のための医師団」の報告書は、今年予定されるミャンマー総選挙を前に、現在以上の難民流入を阻止する狙いがあることは明らかだと分析している。(c)AFP/Cat Barton