【3月9日 AFP】パキスタン空軍のアンブリーン・ガル(Ambreen Gul)大尉(25)は、パキスタン初の女性戦闘機パイロットだ。しかし7日の任務は同僚に交替してもらわなければならなかった。両親がお膳立てした結婚式のためだ。

「(結婚式は)すべてお膳立てされたもの。彼とは話したこともないのです」と、空軍の制服を着たアンブリーンさんは語る。顔は手入れが行き届いてピカピカだ。 

 アンブリーンさんと、イスラマバード(Islamabad)のエンジニアとの結婚は、同国の伝統にならい、双方の親族がアレンジした。国際女性の日(International Women's Day)の8日、彼女は、一度会っただけの男性の花嫁となる。   

 パキスタンは保守的なイスラム教国であり、国連(UN)によると女性の識字率はわずか40%。女性たちは暴力や虐待を受けることが多いが、ドメスティックバイオレンス(DV)に罰則を設ける法律はまだない。

 そして、米経済誌「フォーブス(Forbes)」は、2010年の「世界危険な国ランキング」の4位にパキスタンを挙げている。

■「空軍は女性の権利向上における先駆者」

 2006年、アンブリーンさんら7人の女性が6か月間の選考過程と3年半の厳しい訓練を勝ち残り戦闘機パイロットとして生まれ変わった。戦闘機パイロットはおそらくパキスタン空軍で最も名誉ある職種で、過去60年間、女性に門戸が開かれたことはなかった。

 戦闘機パイロットになったことをアンブリーンさんの父親は喜んでくれたが、母親は、「家名に泥を塗ることになりはしないか」と複雑な面持ちだったという。

「ここは東洋です。娘をなぜ外で働かせるのかと、世間に後ろ指をさされることを、母親は心配していたのです」(アンブリーンさん)

 アンブリーンさんと、同僚でパイロット養成課程を最優秀の成績で終えた空軍大尉のナディア・ガル(Nadia Gul)さん(26)は、「空軍は女性の権利向上における先駆者」だと口を揃える。月給は6万ルピー(約6万4000円)だ。

 ナディアさんの夫は陸軍大尉で、現在、パキスタンのスワト(Swat)でイスラム原理主義組織タリバン(Taliban)掃討作戦の前線にいるという。(c)AFP/Jennie Matthew