【3月9日 AFP】アジアでは差別的な医療やネグレクト(育児放棄)、または胎児の選別により、中国とインドを中心に約9600万人の女性の命が失われている――。国連開発計画(United Nations Development ProgrammeUNDP)は8日、こうした報告書を発表した。

 国際女性の日(International Women's Day)に合わせて発表されたこの報告書は、「経済力」「政治参加」「法的保護」の3分野における女性の権利向上の必要性に焦点をあてたもの。

 それによると、アジアでは、男児の方が好ましいという古い考えに基づいた女児の殺害や中絶が男女比の大きな不均衡を生み、この問題は急速な経済発展にもかかわらず悪化する一方だという。

 世界的に見ても、出生時の男子の比率が最も高いのは東アジアだ。出生時男女比の世界平均が107:100であるのに対し、東アジアは119:100となっている。

 この比率を押し上げているのが、出生における性別格差の著しい中国とインドだ。失われた女性の命の数は両国で約8500万人にのぼっているという。

 なお、失われた命の数は、現在の人口における実際の男女比を、妊娠・出産・出産後に男子と同等の医療が受けられたと仮定した場合の理論的な男女比と比較することにより導き出された。

 報告書は、アジアは力強い経済成長を遂げているにもかかわらず、多くの女性がいまだにその恩恵を被ることさえできずにいると指摘している。

 アジア地域、特に南アジアは、暴力からの保護、保健・教育・雇用の機会、政治参加などにおける女性の地位が、しばしばサハラ以南のアフリカ諸国をも下回り、世界最悪と位置づけられることが多い。(c)AFP/Ben Sheppard