【1月13日 AFP】南アフリカ・ケープタウン(Cape Town)に暮らすマツバ(Matuba)さんは、アフリカ人のゲイで、同性婚もしている。アフリカの他の国々では考えられない状況だ。

 ゲイパレードや同性婚が公然と行われ、ゲイフレンドリーな街として有名なケープタウンを抱える南アフリカは、同性愛が弾圧の対象となることが多いアフリカ大陸の国々のなかでは異色の存在だ。

 アフリカ53か国のうち、同意の上であっても同性愛者同士の性行為を犯罪とする法律があるのは38か国にのぼる。

 ウガンダは、ゲイへの罰則を強化し同性愛を「勧めた」者も罰するとした、「罪深き生活様式」に反対する法案の審議を開始し、国際社会の非難を浴びている。

 性に関する議論がタブー視されているマラウイでは、前週、結婚を試みようとしたとした同性愛カップルが「公然わいせつ」のかどで逮捕された。

 ナイジェリアの、イスラム教徒が多い北部各州では、同性愛に対し死刑が適用される。セネガルでは、イスラム教徒の墓に埋葬された複数のゲイの遺体が掘り返され、墓の外に打ち捨てられるなど、反同性愛行動が再燃している。

■政治に利用された「反同性愛」

 国際人権監視団体「ヒューマン・ライツ・ウオッチ(Human Rights WatchHRW)」によると、アフリカにおける反同性愛感情は、約15年前にジンバブエのロバート・ムガベ(Robert Mugabe)大統領が「同性愛問題を政治的利益のために操作」し始めたころから激しくなった。

 同団体は、ムガベ大統領が、「政治・経済の危機から国民の目をそらすとともに支持を強化するために」同性愛問題に飛びついたと見ている。同大統領は、ゲイについて「犬や豚にも劣る」と表現していた。

■合法化でも続く憎悪犯罪

 南アフリカのアパルトヘイト後の新憲法は、ゲイの平等を認めている。だが、同性婚が合法化されたのは、2006年になってからだった。「同性婚は国と神の名誉を傷つけるもの」と発言していたジェイコブ・ズマ(Jacob Zuma)現大統領は当時、発言についての謝罪を余義なくされた。

 現在、憲法裁判所にゲイの判事もいる南アフリカ。しかし前出のマツバさんは、法では保護されていても社会的には受容されていないと語る。「同性愛者への憎悪犯罪は各地で続いている。白人のゲイたちは、ゲイであるがゆえに家族から勘当されているし、黒人のレズビアンたちは、『治療』の名目で、近所の男たちからレイプなどの暴力を受けているんです」(c)AFP/Fran Blandy