サッカーW杯で懸念高まる児童売買の横行 南アフリカ
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【12月15日 AFP】レソトに住んでいたタト(Thato)さん(10)は、3歳の時に、「グラニー(おばあちゃん)」と呼んでいた女性から、ここ南アフリカに連れてこられた。
その5年後、「グラニー」によって売春宿に売り飛ばされ、児童売春を強要された。ソーシャルワーカーに保護されたのは3か月前のこと。彼女は現在、ヨハネルブルク(Johannesburg)近郊の児童保護施設で暮らしている。
この施設を運営するグレース・マシャバ(Grace Mashaba)さんは、タトさんの物語を語ってくれた。「『グラニー』は、子どもが一人もいないこともあり、周りの人々に、女の子をくれないかといつも懇願していた。立派な家を建てていたこともあり、人々は彼女のことを信用していた。タトの両親は、まさか彼女が娘を売るなど、思いもしなかっただろう」
マシャバさんによると、児童売買では、両親が娘を売り飛ばすケースも多いという。
現在、南アフリカで売春などの搾取的な労働に従事している児童は、推定24万7000人にのぼるとみられている。
■懸念される来年のW杯
南アフリカ政府は、来年のサッカーW杯南アフリカ大会(2010 World Cup)期間中に児童売買が増えるとみており、児童福祉関係者らとともに警戒を強めている。
6月11日~7月11日の大会期間中は、旅行客が急増するとともに、各地の学校は臨時の休校措置がとられる。休校は、子どもたちが日中ほったらかしにされることを意味する。そして、貧困にあえぐ人々が、W杯の40億ドル(約3600億円)ともいわれる莫大(ばくだい)な収益のおこぼれにあずかろうと、児童売買に手を染めるケースが増えることが予想される。
南アフリカ議会は来年初めにも、人身売買禁止法案を可決したい考えだ。
■国連は啓発活動
児童売買は、隣国のジンバブエ、モザンビーク、レソトから連れてこられたというケースが多いが、W杯期間中は仕事を求めて農村部から都市部へ出て行く人が増えると予想される。国連(UN)の国際移住機関(International Organization for Migration、IOM)は、農村部で、演劇などを通じて、人身売買の危険に関する啓発活動を行っている。(c)AFP/Courtney Brooks