ワシントンが「パンダレス」に、市民から惜しむ声続々
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【12月6日 AFP】米ワシントンD.C.(Washington D.C.)にある国立動物園(National Zoo)生まれの4歳のパンダ、タイシャン(Tai Shan、泰山)が、来年初めにも両親のふるさと・中国に送られることがわかり、多くのタイシャン・ファンたちから落胆の声があがっている。 動物園が計画を発表したのは4日。このニュースを知ると、郊外のキャロル・ハイランド小学校から訪れていた2~3年生のグループは、いっせいに「いやだ!」と叫んだ。「なんでタイシャンは自分のお母さんやお父さんが生まれた国に行かなくちゃいけないの?」。この小学校で多数を占める移民の子どもたちは、同じくコートジボワール移民である教師のダドゥアさんを問い詰めた。 数メートル離れたパンダの飼育舎では、タイシャンが木の株の横で背中を丸め、朝のうたたねをする。 「アメリカは中国にたくさんお金を借りているからね。中国にパンダを返してくれって言われたんじゃないかな」、動物園を訪れていた別の小学校の算数教師、デサイー・ブライスさんが横から答えた。 しかし、飼育舎の外で取材に応じていたスティーブ・モンフォート(Steve Monfort)園長の説明は違った。タイシャンの「先祖の土地への返還」は、2005年に誕生した日から決まっていたのだという。 動物園と中国は最初、タイシャンが2歳になる2007年に中国に送ることで合意していた。しかし中国側から、タイシャンのワシントン暮らし延長の申し出があって、もう2年半とどまっていたのだ。ワシントンD.C.のエイドリアン・フェンティ(Adrian Fenty)市長はタイシャンのことを「D.C.の市民のなかの最重要人物」と呼び、もうすぐ米国の切手にもなる。 タイシャンの中国返還・・・というよりも、初めて中国の土を踏むのだが、このニュースはまったく意外なことではなかったものの、動物園の訪問者たちはみな残念がっている。飼育係たちの失望はなおさらだ。 タイシャンの飼育員、リサ・スティーブンズ(Lisa Stevens)さんは唇を震わせながら、ほかの飼育員たちと一緒にどれほどタイシャンに愛情を注いできたかと切々と訴えた。「園の飼育員として、わたしたちはタイシャンのことを心から可愛がっている。生まれたときから片時も目を離さず、これだけの人気者になるまで、成長をずっと見守ってきたんです。わたしたちにとって非常に辛いときです」 しかし、別れの辛さを越えてタイシャンを中国に送り出すのは、パンダに関わる者の宿命だという。「タイシャンは若いオス。四川(Sichuan)省に行って中国が大々的に進めている繁殖プログラムに参加して、子孫を残すという務めを果たさなければならない。将来パンダたちが自然繁殖できるようになるために」 言い方を変えれば、タイシャンの「里帰り」は子作りのためなのだ。在ワシントン中国大使館のWang Baodong広報官は、「彼はガールフレンドがたくさんできるでしょう」と確約する。 タイシャンは2005年7月9日、ワシントン国立動物園で母親のメイシャン(Mei Xiang)と父親のティアンティアン(Tian Tian)のもとに生まれた。両親も2010年末には中国に帰る予定で、そうするとワシントンは「パンダレス(パンダなし)」になってしまう。(c)AFP/Karin Zeitvogel 【関連記事】特製ケーキに舌鼓、パンダのタイシャン4歳に