【11月8日 AFP】通信機能を持ち定期的に家庭の電気使用量を電力事業者に自動送信する高機能の電力計「スマートメーター」。家庭の省エネ対策に役立つとされ、世界各国で設置する家庭が増えつつあるが、スペイン・マドリード(Madrid)で4日から3日間にわたり開かれていたプライバシー問題に関する会議「Future of Privacy Forum」で、こうしたスマートメーターによるプライバシーの侵害という新たな問題点が専門家らにより指摘された。

 スマートメーターの利用により、電気事業者は各家庭に、電気料金が安くなる電気製品の使い方をアドバイスできるようになる。その一方で、電気の使用量や使用時間の情報からその家庭の習慣、つまり食事時間や就寝時間、テレビを見る時間なども電気事業者に把握できてしまうと、同会議に出席したセキュリティ専門家らは懸念する。

 今後数年で電気自動車の利用者が増加すると予測されているが、スマートメーターの利用により、家庭以外での行動に関する情報を収集することも可能になると専門家らは考えている。

 電気事業者が各家庭の習慣に関するデータを企業のマーケティング担当者に売り、企業がその習慣に合わせた広告を出すために情報を利用する可能性もある。たとえば夜中に何度も電気を付けたり消したりするという電気使用記録から、就寝中に何度も目を覚ます人がいることが分かれば、その人は安眠を促進する商品の広告のターゲットになるという訳だ。
 
 スマートメーターの利点は欠点をしのぐとみているある専門家は、「本当に危険なのは、危険があるということを人びとが理解していないということだ」として、悪用を防ぐため、電気使用に関するデータの再販を規制する法律の制定を提案している。

 米国ではすでに800万世帯にスマートメーターが設置されており、2012年までには5200万世帯に設置されると米政府は予測している。また欧州議会は4月、2020年までに電気利用者の80%がスマートメーターを設置することを目指すエネルギーに関する包括政策案を可決した。欧州で最もスマートメーターが普及しているイタリアでは、全世帯の85%に設置済みだという。(c)AFP/Daniel Silva