英MI5創設から100年、スパイ史明かす公認歴史書を出版
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【10月8日 AFP】英情報局保安部(MI5)の創設以来100年間の活動を明かした公認の歴史書が5日、史上初めて世に登場した。2つの世界大戦や冷戦時代の諜報活動、現在のイスラム教原理主義勢力との戦いなどがベールを脱ぐ。
著者は英ケンブリッジ大学(Cambridge University)の歴史学者クリストファー・アンドルー(Christopher Andrew)氏で、題名は『The Defence Of The Realm(国土防衛)』。アンドリュー氏はMI5に保管される約40万冊のファイルにほぼ無制限の閲覧を許され、国内の情報活動を主とするMI5の活動を自らも体験して本書を書き上げた。
■きっかけは9・11
本の中では例えば、1938年に当時の英国首相ネビル・チェンバレン(Neville Chamberlain)を、ドイツの独裁者だったアドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)は陰で「くそったれ」と呼んでいたなどの歴史上のエピソードが暴露されている。また、監視カメラでとらえた未公開の画像も掲載されており、旧ソ連のエージェントやカトリック過激派アイルランド共和軍(IRA)の工作員、爆破計画をたてていたり、まさに爆弾の部品を購入中のイスラム教過激派らが写っている。
1000ページ以上にわたる本書の執筆は「非常にスリルがあり、ナーバスにもなった」とアンドリュー氏は振り返る。「2日に1度は『本当か?まったく知らなかったことだ』と思うことに出会った」
アンドリュー氏に2002年、MI5創設100周年を記念して本書の執筆を委託したのは、当時のスティーブン・ランダー(Stephen Lander)MI5長官だ。ランダー元長官によると、こうしたプロジェクトは欧米の情報機関で初の試みだという。
特に本書の企画にきっかけとなった出来事は、2001年9月11日の米国同時多発テロと、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)型の自爆テロ攻撃の可能性だった。こうした事態により、治安活動にそれまでよりもずっと大きな世論の支持が必要となった。
■活動をオープンに
MI5はここ数年間、その活動をよりオープンにする努力をしてきたが、今回の歴史本はその一環だ。一方で、その使命の多くで絶対不可欠な機密保持も犠牲にはしていない。
1992年にステラ・リミントン(Stella Rimington)氏が長官に就任する以前には、MI5長官が誰かも、その写真も公開されたことはなかったため、リミントン氏の任命が公表された際にはメディアは大騒ぎとなった。一方、今年初めにはジョナサン・エバンス(Jonathan Evans)現長官が、現職のMI5長官として初めて新聞のインタビューを受けた。
情報員の募集方法も変化してきた。
以前はMI5のスパイ候補といえば、ケンブリッジ大かオックスフォード大(Oxford University)のルートを通じて隠密に声をかけられていた。しかし現在、MI5では新聞に求人広告を掲載したり、2002年からはウェブサイトに求人コーナーを設けて新たなスパイを公募している。求人では、女性や人種的マイノリティも積極的に採用する姿勢を強調している。(c)AFP/Katherine Haddon