「ヒトラーの頭がい骨」、実は女性のものだった 米研究で明るみに
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【9月29日 AFP】(写真追加)ナチス・ドイツの総統、アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)のものとこれまで考えられてきた頭蓋骨の一部が、実は女性のものだったことが、米コネティカット大学(University of Connecticut)の調査の結果明らかになった。
この頭蓋骨には銃弾による穴が開いており、ヒトラーはソ連軍がベルリン(Berlin )に侵攻した1945年4月に、市内の自分用の地下壕で銃と青酸カリを使って自殺したという説を支えていた。
2000年に初めてロシア政府の公文書館で公開されたこの頭蓋骨は、当時ソ連軍が掘り返したというあご骨とともに「戦利品」として、ソ連軍が持ち帰ったとされている。あご骨のほうは、ヒトラーを診ていた歯科助手が本人のものと確認した。
しかし、今回のコネティカット大の調査で、頭蓋骨は20~40歳の間の女性のものという結果が出た。
考古学者で骨の専門家であるニック・ベラトーニ(Nick Bellantoni)氏は、頭蓋骨の構造から一目見て女性のものではないかと思ったという。共同調査した同大の応用遺伝子学センターのリンダ・ストラスボー(Linda Strausbaugh)教授が、良いサンプルが入手できればDNAテストをしようと応じた。
ベラトーニ氏はモスクワ(Moscow)へ飛び、DNAサンプルをもらうことができた。チームは5月、ニューヨーク市(New York City)の検視局から2人の法医学者を同大の研究所に招き、3日間で鑑定を終えた。
最初は頭蓋骨の状態から結果が得られないのではないかとも懸念された。ストラスボー教授によると、それまで見たことのあったのは写真だけで、撮影されている側は焦げていたからだ。DNA鑑定にとって火は大敵だ。また室温で保管されていたことも懸念材料だったが、頭蓋骨の中は燃えておらず、鑑定に必要な量の試料が得られた。
しかし、結果に教授たちは驚がくした。「鑑定の結果は、この頭蓋骨が女性のものであることを示していた」(ストラスボー教授)
■ヒトラーのベルリン脱出説も再燃か
歴史番組専門チャンネル「ヒストリー・チャンネル(History Channel)」は「ヒトラーの逃亡」と題した番組でこの発見を取り上げ、ヒトラーは実はベルリンを脱出していたという説を蒸し返した。
けれどもホロコーストに詳しい、米ノースカロライナ大学(University of North Carolina)歴史学者クリストファー・ブラウニング(Christopher Browning)氏は、この頭蓋骨が別人のものだったとしても、ヒトラーは塹壕のなかで死んだという見解を揺るがすものではないという。
ブラウニング氏によると、歴史家たちが根拠としているのはソビエト軍の報告だけではない。当時の調査は複数あり、なかにはヒトラーと愛人エバ・ブラウン(Eva Braun)の遺体を目撃した人物の証言を集めた英軍情報将校によるものもあり、いずれもロシアが回収した遺体を根拠としていないという。ブラウニング氏は「ヒストリー・チャンネルが、1945年以降に分かったことすべてに疑問があるといっても、それは間違いだ」と指摘する。
ソ連軍はヒトラーとエバ、あるいは宣伝相だったヨーゼフ・ゲッベルス(Joseph Goebbels)と家族と思われる遺体を掘り出した後、数回移動したとされ、「記録の完全性という観点からは(頭蓋骨)まったく信用できない」(ブラウニング氏)。頭蓋骨について疑問を示すロシアの関係筋や科学者もいる。ストラスボー教授も、ソ連軍が集めた骨などの遺がいは、記録や保存の手続きや方法が適切でないと指摘する。
塹壕で死んだほかの家族のDNAサンプルが入手できれば、さらに手がかりは得られるかもしれないが、今のところ「頭蓋骨の本当の主は謎だ」(ストラスボー教授)。(c)AFP/Jane Mills
この頭蓋骨には銃弾による穴が開いており、ヒトラーはソ連軍がベルリン(Berlin )に侵攻した1945年4月に、市内の自分用の地下壕で銃と青酸カリを使って自殺したという説を支えていた。
2000年に初めてロシア政府の公文書館で公開されたこの頭蓋骨は、当時ソ連軍が掘り返したというあご骨とともに「戦利品」として、ソ連軍が持ち帰ったとされている。あご骨のほうは、ヒトラーを診ていた歯科助手が本人のものと確認した。
しかし、今回のコネティカット大の調査で、頭蓋骨は20~40歳の間の女性のものという結果が出た。
考古学者で骨の専門家であるニック・ベラトーニ(Nick Bellantoni)氏は、頭蓋骨の構造から一目見て女性のものではないかと思ったという。共同調査した同大の応用遺伝子学センターのリンダ・ストラスボー(Linda Strausbaugh)教授が、良いサンプルが入手できればDNAテストをしようと応じた。
ベラトーニ氏はモスクワ(Moscow)へ飛び、DNAサンプルをもらうことができた。チームは5月、ニューヨーク市(New York City)の検視局から2人の法医学者を同大の研究所に招き、3日間で鑑定を終えた。
最初は頭蓋骨の状態から結果が得られないのではないかとも懸念された。ストラスボー教授によると、それまで見たことのあったのは写真だけで、撮影されている側は焦げていたからだ。DNA鑑定にとって火は大敵だ。また室温で保管されていたことも懸念材料だったが、頭蓋骨の中は燃えておらず、鑑定に必要な量の試料が得られた。
しかし、結果に教授たちは驚がくした。「鑑定の結果は、この頭蓋骨が女性のものであることを示していた」(ストラスボー教授)
■ヒトラーのベルリン脱出説も再燃か
歴史番組専門チャンネル「ヒストリー・チャンネル(History Channel)」は「ヒトラーの逃亡」と題した番組でこの発見を取り上げ、ヒトラーは実はベルリンを脱出していたという説を蒸し返した。
けれどもホロコーストに詳しい、米ノースカロライナ大学(University of North Carolina)歴史学者クリストファー・ブラウニング(Christopher Browning)氏は、この頭蓋骨が別人のものだったとしても、ヒトラーは塹壕のなかで死んだという見解を揺るがすものではないという。
ブラウニング氏によると、歴史家たちが根拠としているのはソビエト軍の報告だけではない。当時の調査は複数あり、なかにはヒトラーと愛人エバ・ブラウン(Eva Braun)の遺体を目撃した人物の証言を集めた英軍情報将校によるものもあり、いずれもロシアが回収した遺体を根拠としていないという。ブラウニング氏は「ヒストリー・チャンネルが、1945年以降に分かったことすべてに疑問があるといっても、それは間違いだ」と指摘する。
ソ連軍はヒトラーとエバ、あるいは宣伝相だったヨーゼフ・ゲッベルス(Joseph Goebbels)と家族と思われる遺体を掘り出した後、数回移動したとされ、「記録の完全性という観点からは(頭蓋骨)まったく信用できない」(ブラウニング氏)。頭蓋骨について疑問を示すロシアの関係筋や科学者もいる。ストラスボー教授も、ソ連軍が集めた骨などの遺がいは、記録や保存の手続きや方法が適切でないと指摘する。
塹壕で死んだほかの家族のDNAサンプルが入手できれば、さらに手がかりは得られるかもしれないが、今のところ「頭蓋骨の本当の主は謎だ」(ストラスボー教授)。(c)AFP/Jane Mills