【9月15日 AFP】パリ(Paris)では9日から13日まで、世界一のトライバルアートの祭典「Parcours des Mondes」が開催された。世界中から60のギャラリーが出展し、美術館関係者や専門家、ディーラー、コレクターらが集まった。

 会場には、アフリカ人の売人の姿もそこかしこで見られた。来場者をつかまえては「アフリカの美術品に興味がありますか?」と耳元でささやき、「本物の仮面」や「古代に使われていた本物の槍」を売りつけようとしている。

 同展を主催するピエール・モース(Pierre Moos)氏は、「アフリカには今や、本物の美術品はほとんど残っていない」と話す。トライバルアート市場に入ってくる美術品は、オリジナルのものが減りつつあり、ニセモノが市場を席巻しつつあるという。

■活況を呈すトライバルアート

 景気後退の影響はアート市場にも少なからず及んだかもしれないが、トライバルアートは興隆を極めている。今年最高値をつけたのはガボンの美術品で、取引価格は140万ドル(約1億2800万円)にものぼった。70万ユーロ(約9300万円)をつけたパプアニューギニアの太鼓、40万ユーロ(約5300万円)をつけたアンゴラの仮面もある。

 1970~80年代以降にアフリカ大陸を離れたアフリカン・アンティークは数えるほどしかない。現在高値で取り引きされているものは、植民地政府による収集品であることが証明されている品々で、これらを取り扱っているギャラリーは世界中で20~30程度だという。

■どうやって「本物」を見分けるのか

 アフリカ・アジア・オセアニアのトライバルアートは、西洋のアートやアンティークのようにサインが残されていたり文献に由来が記されていたりするわけではないので、作者についてはほとんど何も知られていない。それではどうやって、本物とニセモノを区別するのだろうか。

 専門知識のほかにも「直感」が必要だと、ディーラーらは口をそろえる。

 トライバルアートの大半は宗教芸術であり、儀式や宗教行事の一部または全体を形作っていた。「外見は本物そのものなのに、どことなく正しいとは思えない、魂が込められていない、と思えるものがあります。そういったものはニセモノです」と、あるギャラリーのオーナーは話してくれた。

 また、儀式用のものであれスプーンや椅子といった日常品であれ、それが本物かを見極める1つのルールは、「使い込まれているかどうか」だという。

 ニセモノには、古く見せようとして過度にこすったり磨いたりした形跡があったり、わざわざ古い木を彫って作られたものがあるという。本に掲載された写真をもとに製作される場合もあり、そういったものは大きさが違っていて細部がなく、写真では見られない背部はでたらめだという。(c)AFP/Claire Rosemberg