【9月4日 AFP】米フロリダ州タンパ(Tampa)の銀行で、小切手を換金しようとした男性が、換金を断られる事態に遭遇した。窓口の担当者が、うまれつき両腕がないこの男性に、母印を押すよう求めたのだ。地元紙「セントピーターズバーグ・タイムズ(St. Petersburg Times)が3日、伝えた。

 この男性は、タンパ在住のスティーブ・バルデス(Steve Valdez)さん(54)。妻の依頼で、米大手銀バンク・オブ・アメリカ(Bank of America)のタンパ支店を訪れたところ、窓口の女性行員に、同行に口座を持たない個人が小切手を現金に代える際には、母印が必要だと言われた。

 ところが、うまれつき両腕がないバルデスさんの手は義手だったため、女性行員は「当然ながら、母印は押せませんよね」とバルデスさんに言い放ったという。

 代わりに、バルデスさんは写真付き身分証明書を2種類も提示したが、行員は首をたてに振らず、同行の支配人に相談。支配人は、小切手を換金するには、バルデスさん自身の口座を同行に開くか、妻を連れてくるしかないと告げた。バルデスさんは、どちらも受け入れずに銀行を立ち去ったという。

 支配人に銀行の規則に従っているだけだと釈明されたというバルデスさんは、「ショックでしたよ。(銀行側にとって)今回のような事態は初めてではないに違いない」とセントピーターズバーグ・タイムズ紙に語った。

 こうした報道をうけ、バンク・オブ・アメリカは「母印を提供できない場合の代替手段を申し出るべきだった」との謝罪声明を発表した。(c)AFP