【7月15日 AFP】赤ちゃんのころの病気がもとで自分の心臓の隣にドナーの心臓を移植された英国の少女が、ドナーの心臓を除去された後も、自分の心臓だけで元気に過ごしている。手術に携わった医師らが、14日の英医学専門誌「ランセット(Lancet)」に詳しく報告している。

 英カーディフ(Cardiff)近郊に住むハンナ・クラーク(Hannah Clark)さん(16)は、1995年、2歳のときに肥大型心筋症と診断され、同年7月に本人の心臓の隣にドナーの心臓が移植された。

 ドナーの心臓はまもなく、本人の心臓の機能の大半を引継ぎ、ハンナさんは快方に向かっていった。

 しかし、心臓の拒絶反応を抑える免疫抑制剤を飲み続けることによる副作用として一般的な、がんの一種「移植後EBウイルスリンパ増殖性症(EBV PTLD)」を発症。化学療法などでも回復せず、医師は免疫抑制剤の投与量を減らしたが、その結果、ドナーから移植された心臓の機能が低下し始めた。

 だがそれとは対照的に、本人の心臓は徐々に回復し、正常に機能するようになった。

 2006年2月、心臓移植も担当した英インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)のマグディ・ヤコブ(Magdi Yacoub)医師らのチームは、免疫抑制を止めるためにドナーの心臓を除去するという、前例のない手術を行った。

 それから39か月が経過したが、ハンナさんはがんを完全に克服し、心臓も正常に機能しているという。

 医師らは、ドナーの心臓を移植された子どもの心臓が、ドナーの心臓を除去しても支障がないまでに回復したという例は世界で初めてではないかとしている。
 
 ハンナさんは現在高校生。友達とスポーツをして楽しんでいるほか、動物を扱うバイトもしているという。(c)AFP/Alice Ritchie