【6月5日 AFP】全米最高齢の現役警官、マニュエル・カリー(Manuel Curry)さんが4日、84歳で死去した。ニューオーリンズ(New Orleans)警察に63年以上勤務。数週間前に病気で休職するまで、まさに警察一筋の人生だった。

 カリーさんは、第二次大戦中に下士官としてノルマンディー上陸作戦に参加した経歴をもつ。その時の功績で2004年には仏レジオン・ドヌール勲章(Legion d’Honneur)を授与された。

 警官への任官は1946年。まだ無線が普及しておらず、事件などで同僚警官の協力を求める際は警棒で歩道を叩いて呼ばねばならない時代だった。

 60年代の公民権運動が活発な頃は、市内で最初に黒人女子生徒の入学を認めた公立学校の玄関に立ち、生徒が安全に校内に入れるよう警備した。「人びとはわたしたちを黒人解放支持者(nigger lovers)とののしったけれど、無視したよ」。ニューオーリンズが麻薬や犯罪で悪名をはせた80年代も経験した。

■ハリケーン災害時も大活躍

 2005年にハリケーン・カトリーナ(Hurricane Katrina)の襲来でニューオーリンズが大きな被害を受けた際には、81歳ながら激しい雨風の中、率先して被災者を安全な場所に案内し続けた。

 この時は、若手警官の多くが行方不明になったり、中には略奪行為に加わるなど警察内部も大混乱に陥ったが、カリーさんは飛んできた木の枝で肩を負傷し、道路の水位が上がって車が走れなくなるまで、救助活動をやめなかった。しかも、すぐに勤務に復帰し、自宅を失った警官用の仮設住宅ができるまで1か月間にわたって、車の中に寝泊まりしていた。

■警官職は「やみつき、やめられない」と語る

 2006年にAFPの取材を受けたカリーさんは、「これまでの人生で最悪の出来事は、(ノルマンディー上陸作戦の)オマハビーチ上陸だね。次がカトリーナだ。どちらの出来事も決して忘れられない」と語っていた。

 警官としての職務を果たすには年を取りすぎていると認めないのはなぜか、と尋ねられると、肩をすくめて笑いながら、こう答えた。「この仕事は一度、病みつきになったが最後、やめられなくてね」 (c)AFP/Allen Johnson