【2月24日 AFP】中国・北京(Beijing)郊外にある清朝時代の遺構、円明園(Old Summer Palace)。この庭園が1860年に英仏連合軍によって焼き払われ略奪されたことは、中国の植民地化を進める列強諸国によって同国が受けた「屈辱」として、約150年たった今でも色あせることはない。

 清代の全盛期に建てられたこの西洋風の離宮を、当時の皇帝らは避暑に利用していた。1856年に勃発した第2次アヘン戦争も大詰めの1860年10月、英仏連合軍は北京を占領。兵士らはまず円明園を略奪したが、捕虜となった英仏兵らへの殺害や拷問の報復として、円明園に引き返して火をつけた。

 このとき英国軍がこの庭園から略奪した品に含まれていた2つのブロンズ製の遺物が、このほどパリ(Paris)で競売にかけられたことは、中国人の心の古傷を再び切り開くこととなった。
 
 円明園の略奪をテーマにした本の著者であるBernard Brizay氏は、「英仏連合軍が円明園を略奪し、のちに英国軍が焼き払ったことは、中国人の心には許し難い犯罪として残っている。1870年のフランス-プロシア戦争で、ヴェルサイユ宮殿が破壊され、ルーブル美術館(Louvre)が略奪され、国立図書館が放火されたのを合わせたほどの被害を、円明園はいちどきに受けた」と話す。

 この事件は中国人のみならず、フランス人作家ヴィクトル・ユーゴー(Victor Hugo)などの外国人をも驚愕(きょうがく)させた。ユーゴーは、「東洋の壮麗かつ息をのむほど美しい博物館」の破壊について、「歴史は目撃した。フランスという名と、英国という名の、2人のならず者を」と書き記している。 

 中国の弁護士らは、フランスで開催されるクリスティーズ(Christie's)のオークションに円明園の遺物が競売中止を求めて法的措置を取り、支持を得るため国民感情に訴えた。

 中国政府もこうした競売を声高に非難しており、中国外務省の姜瑜(Jiang Yu)報道官は「戦争時に略奪された文化的な品々を競売にかけることは、中国人民の感情を害し、文化的権利を侵害するばかりか、文化財に関する国際条約にも抵触する」と発言している。(c)AFP