カルチャーショック満載、中国の運転免許テスト体験記
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【2月9日 AFP】目の前の人の腹部に穴が空き、腸がはみ出ていたらあなたならどうするか?A.元の場所に腸を戻す。B.何もしない。C.何か容器に入れてこぼれないようにし、それをその人の体にくくり付ける。
上の問いは医学部1年生の試験問題ではない。中国の運転免許の筆記試験に出てくる100問のうちの1問だ(正解はC)。
中国では運転免許の受験者は800問が詰まった問題集を事前に渡され、そのうちの100問が実際の試験問題に出る。国際的に共通する交通標識に関する問題もあるが、中国でしかお目にかかることはないと思える問題もある。
回答も一筋縄ではいかない。問題によっては3回答中2回答が正解という場合もあるし、どう見ても誤りじゃないかと思うような選択肢が正答の場合もある。
例えば次の問いはどうだろう。「運転中につばをはきたくなったらどうすべきか?-A.窓からつばを吐く。B.紙くずにつばを吐き、ごみ箱に入れる。C.車内の床に吐く。
正答はB。
■各国語揃っているのはよいが・・・
最近のある朝、北京市公安局公安交通管理局(Beijing Traffic Management Bureau)では、トイレ裏に設けられた外国人用試験会場で米国人、ロシア人、韓国人、フランス人などのグループが試験の開始を待っていた。
部屋の液晶テレビには、交通事故の痛ましい画像が次から次へと流れていた。血だらけになり後部座席に横たわる重傷者、事故直後に呆然として座り込むドライバー、涙に暮れる親戚たち・・・。
北京の航空会社で働くロシア人のニキータさんは4日間の試験演習を終え、外国人グループの中で最も自信満々だった。20人ほどの受験者がコンピューター・モニターを前に着席すると試験は開始された。
最初にIDナンバーを入力して使用言語を選択、それから選択式の問題や正誤回答式の質問に答えていく。100問の回答時間は45分、合格には90問以上の正解が必要だ。結果は直後にわかる。
米国大使館の職員たちのグループは、1人を残し全員合格し、陽気な雰囲気で部屋を出て行った。週末全部を予習に費やしたという。受からなかった男性も82問の正答で、同僚の女性は「89問で不合格だったらもっと悔しかったわよ」と冗談を交えながらなぐさめていた。
一方、ロシア人のニキータさんといえば、まったく打ちのめされた気分だった。あんなにも試験対策をしたのに、正解は45問だけだったのだ。ニキータさんは言う。「問題に出てきたロシア語がまったく意味不明だったんだよ」
■不思議な視力検査
筆記試験が終わると、本国で運転免許を持っている受験者は技能試験は免除される。ただし、視力検査だけは課されるが、この何の問題もなさそうな検査にまたけっこうな驚きがある。
視力検査は近くの病院で行われるが、左右の目を交互に隠して、看護師に向かって検査表の文字を読みあげる方法だ。
ここまでは普通に聞こえるだろう。しかし、不可解なのは鏡の中の検査表を読まなければならないこと。そして、表に書かれている文字は、どの言語の文字でもない。「反転したE?それとも逆さま?これはなんて読むの?」、受験者は悩む。
■実際の運転で出くわすさらなる大混乱
どうにかして視力検査をパスすると、大半は免許証を手にして交通管理局を後にした。けれど、現実はここから始まる。
駐車場の入り口では2台の車がアコーディオンのようにつぶれ、北京市内の道路では交通ルールを気にしている人間など誰もいなさそうにみえる。内側レーンの追い越しは当たり前、赤信号をやすやすと通り抜けるタクシー、車線の流れに逆らい横断歩道を無視して進む自転車ライダー。
08年1年間の中国の交通事故による死者は7万3500人、負傷者は30万4000人に及んだ。
免許を取れたとしても、世界で最も危険な中国の道路にようこそ、というわけだ。(c)AFP/Pascale Trouillaud
上の問いは医学部1年生の試験問題ではない。中国の運転免許の筆記試験に出てくる100問のうちの1問だ(正解はC)。
中国では運転免許の受験者は800問が詰まった問題集を事前に渡され、そのうちの100問が実際の試験問題に出る。国際的に共通する交通標識に関する問題もあるが、中国でしかお目にかかることはないと思える問題もある。
回答も一筋縄ではいかない。問題によっては3回答中2回答が正解という場合もあるし、どう見ても誤りじゃないかと思うような選択肢が正答の場合もある。
例えば次の問いはどうだろう。「運転中につばをはきたくなったらどうすべきか?-A.窓からつばを吐く。B.紙くずにつばを吐き、ごみ箱に入れる。C.車内の床に吐く。
正答はB。
■各国語揃っているのはよいが・・・
最近のある朝、北京市公安局公安交通管理局(Beijing Traffic Management Bureau)では、トイレ裏に設けられた外国人用試験会場で米国人、ロシア人、韓国人、フランス人などのグループが試験の開始を待っていた。
部屋の液晶テレビには、交通事故の痛ましい画像が次から次へと流れていた。血だらけになり後部座席に横たわる重傷者、事故直後に呆然として座り込むドライバー、涙に暮れる親戚たち・・・。
北京の航空会社で働くロシア人のニキータさんは4日間の試験演習を終え、外国人グループの中で最も自信満々だった。20人ほどの受験者がコンピューター・モニターを前に着席すると試験は開始された。
最初にIDナンバーを入力して使用言語を選択、それから選択式の問題や正誤回答式の質問に答えていく。100問の回答時間は45分、合格には90問以上の正解が必要だ。結果は直後にわかる。
米国大使館の職員たちのグループは、1人を残し全員合格し、陽気な雰囲気で部屋を出て行った。週末全部を予習に費やしたという。受からなかった男性も82問の正答で、同僚の女性は「89問で不合格だったらもっと悔しかったわよ」と冗談を交えながらなぐさめていた。
一方、ロシア人のニキータさんといえば、まったく打ちのめされた気分だった。あんなにも試験対策をしたのに、正解は45問だけだったのだ。ニキータさんは言う。「問題に出てきたロシア語がまったく意味不明だったんだよ」
■不思議な視力検査
筆記試験が終わると、本国で運転免許を持っている受験者は技能試験は免除される。ただし、視力検査だけは課されるが、この何の問題もなさそうな検査にまたけっこうな驚きがある。
視力検査は近くの病院で行われるが、左右の目を交互に隠して、看護師に向かって検査表の文字を読みあげる方法だ。
ここまでは普通に聞こえるだろう。しかし、不可解なのは鏡の中の検査表を読まなければならないこと。そして、表に書かれている文字は、どの言語の文字でもない。「反転したE?それとも逆さま?これはなんて読むの?」、受験者は悩む。
■実際の運転で出くわすさらなる大混乱
どうにかして視力検査をパスすると、大半は免許証を手にして交通管理局を後にした。けれど、現実はここから始まる。
駐車場の入り口では2台の車がアコーディオンのようにつぶれ、北京市内の道路では交通ルールを気にしている人間など誰もいなさそうにみえる。内側レーンの追い越しは当たり前、赤信号をやすやすと通り抜けるタクシー、車線の流れに逆らい横断歩道を無視して進む自転車ライダー。
08年1年間の中国の交通事故による死者は7万3500人、負傷者は30万4000人に及んだ。
免許を取れたとしても、世界で最も危険な中国の道路にようこそ、というわけだ。(c)AFP/Pascale Trouillaud