【1月27日 AFP】丘の斜面で静かなたたずまいを見せている15世紀の城砦(じょうさい)のはるか上空を、スチールワイヤーにつながれた1人の男が滑るように「飛行」している。見物人の1人が、「あれは英国の高等弁務官(駐インド大使)だ」と興奮気味に指さす。

 インド・ニューデリー(New Delhi)から南に100キロ、ラジャスタン州(Rajasthan)のニームラナ(Neemrana)は、同州に数ある荘厳な城砦の1つ。過去15年間で豪華ホテルへと生まれ変わり、観光客に歴史とロマンの風情を与えている。

 ここに前週、同国で人気の「史跡巡り」の1つとして、趣ががらりと異なる「ジップワイヤー」なるアトラクションがオープンした。丘と丘をワイヤーロープでつなぎ、これにハーネスで身体を固定して、ロープを伝って滑り降りるというものだ。

 この「ジップワイヤー」はニュージーランド、欧州、北米ではおなじみだが、インドではなかなか登場しなかった。ニューデリーでアドベンチャー・スポーツ専門会社「Flying Fox」を共同で立ち上げ、アトラクションを企画した英国人のジョナサン・ウォルター(Jonathan Walter)氏(40)によると、インドでできる冒険と言えば、これまではせいぜい「ラクダの背に揺られる」ぐらいなものだった。

■息をのむ光景が眼下に

 ニームラナ城砦の上空には、5本のワイヤーが張り巡らされており、いちばん長い全長390メートルのワイヤーには「イーグルの飛行路」という名前が付けられている。参加者は眼下に、樹木が茂った谷、がけ、丘を流れる川、斜面に築かれた砦、その下に広がる平原など、さまざまな景観を楽しむことができる。所要時間は、ガイダンスを含めて2時間を超える。「飛行」を終えた参加者は、ホテルのプールサイドに移動し、カクテルでのどを潤す。

 同社は地元で8人のインストラクターを雇用し、観光客の案内やガイダンスを行っている。

「(怖がらずに)目を開けていさえすれば、ラジャスタンの景色と歴史的建造物を堪能できるユニークな方法です」と、元英陸軍グルカ兵で世界中で山岳調査隊を率いてきたというウォルター氏は自信を示す。

■環境にも良い

 ジップワイヤーは、環境への影響もほとんどないという。ニームラナのような文化遺産では、この点は特に重要だ。「ジップワイヤーは景観を損なわないし、騒音もない。城砦の外観には何の影響もない」(ウォルター氏)

 同氏は、アトラクションの成功を確信しており、既に次の候補地を模索中だ。(c)AFP/Ben Sheppard