【1月20日 AFP】マサイマラ(Maasai Mara)、「ビッグファイブ」、ケニア山(Mount Kenya)、インド洋のビーチ――ケニアに観光スポットはあまたあれど、今最もクールな観光スポットは「オバマランド」だ。

 ビクトリア湖(Lake Victoria)畔の丘にある住民数百人の小さな村、コゲロ(Kogelo)は、バラク・オバマ(Barack Obama)米次期大統領の父親が生まれた場所としてにわかに脚光を浴びるようになった。英雄の父祖の地を巡礼する米国の「オバマニア」たちから、オバマ氏を誇りに思うケニア国民まで、このところ、この村を訪れる観光客の姿は絶えない。

 ロサンゼルスからの観光客、ブライアン・クルソン(Brian Coulson)さんは、首都ナイロビ(Nairobi)からバスで半日かけてビクトリア湖畔のキスム(Kisumu)に到着し、そこからタクシーに乗って村にやってきた。観光施設は何もないが、オバマ氏の名前が冠されたオバマ議員中等学校など、オバマ氏ゆかりの場所を見て回った。祖母のサラ(Sarah Obama)さん宅は、警備が厳重で中を見ることができなかったものの、「価値ある旅だった。自分の目でいろいろ見ることによって、次期大統領の人となりを前よりも理解できたと思う」と満足げだ。

■コゲロ村を目指す米国人のツアー

 住民の話では、村には毎日平均して300人もの観光客が訪れている。春の観光シーズンには、さらなる観光客が予想される。

 米国などの旅行代理店は、コゲロ村訪問を加えたパッケージをすでに精力的に売り出している。ニューヨーク(New York)のアフリカ旅行専門店2Afrika Incは、オバマ氏の大統領「当確」直後に、11日間の「プレジデント・ヘリテージ・サファリ」を発売した。ケニア山、ナクル湖(Lake Nakuru)、マライマラなどケニア観光の基本を押さえた上で、コゲロ村、そしてオバマ氏のルーツであるルオ人(Luo)ゆかりの場所に2泊する。料金は2999ドル(約27万円)。

■ケニア観光業の救世主?

 一方で、地元ケニアの観光産業は、これといった観光資源のないコゲロ村や周辺地域に関し、オバマ氏関連での人気の潜在性に気付くのが遅く、出遅れた感がある。

 コゲロ村初のツアーオペレーターのジョセフ・オルオコ(Joseph Oluoko)さん(30)によると、この村にはみやげ店もホテルと呼べるものもなく、ドライバーガイドもいない。冷蔵庫もないので、冷たいソーダも飲めない。

 観光客を泊める時は、自宅の敷地内にテントを張っていたというジョセフさんは最近、オバマ氏の祖母のサラさん宅から数分のところに、エコロッジを建設した。

 オバマ氏への世界的な熱狂をあてこんだビジネスチャンスには、地元の起業家たちのみならず政府観光局も遅ればせながら注目し、オバマ博物館の建設、バードウォッチングツアーの企画などのプロジェクトが進行中だ。貧困の村コゲロは、2年前のケニア大統領選後の混乱の影響冷めやらぬ同国観光業の救世主になるかもしれない。(c)AFP/Jean-Marc Mojon