【12月30日 AFP】フランスのワイン業界にとって2008年は苦渋の年となった。かつてはフランスの象徴としてその存在を誇ったワインだが、今やアルコール乱用に対するいくつもの法規制の「カクテル」に飲み込まれようとしている。

 美食や豊かな暮らしの理想とともに、長らくフランス人の生活の中心に君臨してきたワインだが、最近では国民的人気も低下気味な上、生産者たちは、麻薬やポルノと同様の扱いで政府の規制対象にさえされているとこぼす。

■規制強化と反比例する国内のワイン人気

 同国の研究機関「生活条件調査研究センター(CREDOC)」が実施したワインへの親近感に関する最近の調査によると、フランス人の51%がワインは「危険」と答えている。

「ワインはフランスでは長いこと、アルコール飲料の持つ負のイメージを免れてきた」とCREDOCのラファエル・ベルジェ(Raphael Berger)氏はいう。同氏は、ワインに対するフランス人の態度の変化は、政府が進めているアルコール規制の強化によるところが大きいとみる。

 飲酒運転の禁止導入を成功させた保健・青年・スポーツ省は2008年、10代の間で広まっている深酒やアルコール依存の抑制を目指す法整備にまい進した。

 2009年には、現在は16歳の酒類購入年齢を18歳に引き上げ、早い時間限定の割引サービスである「ハッピーアワー」や飲み放題サービスの禁止が予定されており、無料試飲も禁じられそうな勢いだ。

 また、フランスの医師らは、妊娠中にも2、3程度のシャンパンを飲むことには問題ないと保証しているが、政府は酒類のボトルに「妊娠中の飲酒は止めましょう」と表示することを生産者に義務付けた。

 こうした規制について、仏ワインの名産地ボルドー(Bordeaux)のワイン業者組合を代表するGeorges Haushalter氏は「適度な飲酒を奨励するどころか、消費者に(飲酒に対する)恐怖感を植え付ける政策だ」と疑問を投げかける。

■金融危機で輸出も低迷、追い討ちのネット広告禁止も

 政府規制と呼応するように、ワインの国内消費も低下を続けている。1990年代には75リットルだった国民の年間1人当たりのワイン消費量は、最近では64リットルに落ち込んだ。
 
 冷え込む国内消費を支えていた英国や米国など海外でのワイン人気も、2008年には世界規模での金融危機の影響をこうむった。フランス国際企業開発庁(ユビフランス、Ubifrance)によると、1月から9月までのワイン輸出量は前年同期比で10%の減少だった。

 さらに追い討ちをかけるように、ロゼリーヌ・バシュロナルカン(Roselyne Bachelot-Narquin)保健相は、ポルノサイトに対して行っている規制と同様の閲覧時間制限を、2009年からワインの広告にも適用する方針を打ち出した。

 ボルドー産ワインの伝統的銘柄、シャトー・パルメを生産するトマ・デュロー(Thomas Duroux)氏も、2008年は特に広報面で散々な年だったと嘆く。「世界で最も重要なワイン生産地であるフランスが、ワインに対して世界一厳しい広告規制を敷くとは」

 ワイン業界に対する政府の厳しい仕打ちについて、デュロー氏は「(ニコラ・)サルコジ大統領がワインを飲まないからなのか。それとも、反飲酒団体のロビー活動があまりにも強力なせいなのか」と首を傾げた。(c)AFP/Sophie Kevany