【12月19日 AFP】仏化粧品ブランド「ロレアル(L’Oreal)」の創始者の娘で、フランスで最も裕福な女性でもあるリリアン・ベタンクール(Liliane Bettencourt)さん(86)が、1人の芸術家に10億ドル以上もの支援を行い、議論を呼んでいる。

 リリアンさんはロレアルの株主でもあり、米経済誌「フォーブス(Forbes)」によれば、その資産総額は約230億ドル(約2兆円)に上るという。

 芸術の後援者としても知られるそのリリアンさんが、パリ(Paris)で活動する写真家で画家でもあるFrancois-Marie Banierさんに芸術作品、贈答品、生命保険契約などを含め14億5000万ドル(約1300億円)の支援を行ってきた。

 Banierさんは、劇作家サミュエル・ベケット(Samuel Beckett)氏、ファッションデザイナーのピエール・カルダン(Pierre Cardin)氏、映画俳優のジョニー・デップ(Johnny Depp)など、多くの有名人と交友がある。

 ベタンクール家の資産が浪費されることを恐れたリリアンさんの一人娘フランソワ(Francoise Bettencourt-Meyers)さん(55)は、Banierさんがリリアンさんを利用しているとして提訴。父親のアンドレ(Andre Bettencourt)さんが死亡したあと、08年初頭に提訴したが、裁判の詳細が明らかになったのは12月になってからだ。

 パリ郊外の自宅で捜査当局の取り調べを受けたリリアンさんは、「私のお金で何をしようと自由」と語ったという。当局によれば、リリアンさんは精神鑑定を拒否しているが、判事が決定を下せば、強制的に受けさせられるという。

 当局は捜査内容をまとめ、近日中に訴追について決定する。

 過熱する報道を受けて、リリアンさん側はロレアルの従業員や友人に向け、コメントを出した。リリアンさんは心身ともに健康だと主張、報道によって心配をかけると思うが安心してほしいと訴えている。

 リリアンさんは、ベタンクール・シュレール(Bettencourt-Schueller)基金を設立し、芸術だけでなく、医療、文学などの分野でも多くの支援を行ってきた。しかし、報道によれば、これまで同基金が1度に行った寄付の最高額は1200万ユーロ(約15億円)で、Banierさんに贈った額とは比べものにならない。

 フランソワさんとリリアンさんはともにロレアルの理事で、ベタンクール家が所有する30%の株式を共同管理してきたが、一部メディアは、現在では互いに口をきかない関係になっていると報じている。(c)AFP